mixiユーザー(id:60260068)

2014年03月12日21:29

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『DESTROYER-001』


男は環状線を走っている
右後方、追い越し車線を
大きな熊が近づいてくる
肉で盛りあがった毛皮が波打っている
「かなりのスピードだな」
早くも右隣に並んでいる
見れば足腰は金属で出来ていた
「やはりロボットか」
男はタバコを取り出し火をつけた
熊は並走している
目を合わせれば体当たりをしてくるはず
煙を深く吸い込んだあと
ウィンドウを開け、熊の方を見た
熊の顔がある
鼻っ面にゆっくりと煙を吐いて

右足がブレーキを踏み込む

シートベルトはロックがかかる

熊は前方で喘いでいる

右手が青いボタンに伸び親指に力が伝わる

熊は慣性エネルギーを回転で散らしている

操作盤が立ち上がる

熊が立ち上がる

右足はアクセルに踏みかえレッドゾーンへ

熊の毛皮は剥がれてロボットそのもの

双方が近づく

熊は睨みをきかせて走る

人差し指は緑のボタン、中指は赤のボタン

バンパーが、くの字に突き出し、ミサイル発射




目の前にあった熊の睨みは頭上を飛び越え
粉々になった金属片だけが
虚しく車体を鳴らしている

男は吸殻入れにタバコの灰をたたいた





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