『青はきらい』

でも、ボクたちが大人になった時の子供たちってスゴいね。英語がしゃべれるみたい。ボクも「サンキューベリマッチ」とか「ディッシッザペン」とかならしゃべれるよ。
それから、スーパーのかごに山になってる月皮とかクツとかじゃなくて、えもんかけにかかった高いやつとか、たなの箱に入ったニケって書いた赤いクツとか(女子か？)を買ってもらうみたい。早ってるみたいね。

みんなのお父さんお母さんたちはお金持ちになったんだね。ああ、ボクたちか。ボクも先生みたいにあたま良くなるかなあ。でも先生の家とボクの家変わらないくらいの大きさだから、先生はお金持ちじゃないってことか。校長先生の家は木がいっぱい立ってて、家が半分くらいかくれてて、城みたいに屋根が重そうだから、校長先生はお金持ちだな。

バイオリン習いたかったなあ。お金があったらストラディバリ買ってもらって、町にロールスロイスで送ってもらって、(カズベーに教えてもらったリンカーンコンチネンタルマークツーでもいいよ)校長先生みたいな白ヒゲのめしつかいが「ぼっちゃん、行ってらっしゃいませ。」「うん、一時間したら向かえに来てね。」って、大人にけい語を使わない。だってお金持ちのぼっちゃんだから。

コンサートに出る時は青い月皮は着ないよ。青は弟の色。弟はとしごだからボクよりムダに大きくて、あまり言いたくないけどボクは小さい。まちがえないように弟は青でボクは赤と茶色と緑だけど。お母さんはボクに弟のお下がりを着せようとするからきらい。ボクは新品の赤い月皮を着てチゴイネルワイゼンをひく。

ボクはもうちっちゃい子じゃないから無理みたい。ボクはお金持ちになって浅田みよこみたいなおよめさんとけっこんして、ストラディバリを子供に買ってあげて習わしてあげようと思う。ぜったい。