か細い指先を広げ
やわらかくなった空にふれさせて
おまえは何かを掴もうとしている
高速道脇に葉を茂らせていない木々がある。その姿は寒々しくもあるのだが、毛細血管のようにのびた細い枝と枝の間の空が微かに白くかすんでいる。
このところの陽気に、枝は、今、とばかりに深呼吸をしているのだろう。
仕事先へ急ぐ車は脇目もふらず、前の障害物を追い抜こうと、小さな枠に収まった景色をしきりに気にしている。
過ぎ行く季節に乗り遅れまいと、さくらも私たちには気づいていないのだろうか。
長いトンネルに遮られ、人と景色が分けられた。
さくらは、まだ咲いていない
というより、
いま、花を咲かそうとしている
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