mixiユーザー(id:60260068)

2014年02月09日13:09

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『かげろう』


月影を鏡にうつす湖面から
静寂の膜をほどいて現れるかげろう

闇を透かした翅のはかない脈が
夢の岸に立つ私をやさしく捕らえる


隙間からこぼれた雫は
冷たい湖面をたたき
金色の張りつめた弦をふるわせる


星空の隅で林がざわめき始めた

風が
湖は漣にみたされ
しだいに昂る波頭が白く際立つ


煙る影が星を隠し
月までも呑みこもうとしていた

囁きが耳をかすめる

− さよなら −


月は隠れてしまった
降りだした雨がかげろうを消し去る

私の影が闇にまぎれ
雨音の中心で立ち枯れている





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