●2013年11月18日 (月) 曇り
▼電話が鳴った。
「きょう都合がいい?」
「あぁ、いいよ。きょう行く?」
電話をかけてきたのは、キキサカさんで、
ママモトさんを見舞いに行く話だ。
土曜日に、布団を押し入れにしまおうとして
布団を持ち上げたとき、急に左腕だったか、右腕だったかに、
力が入らなくなって、その場に、ママモトさんは
へたりこんでしまった。
そばに奥さんがいて、すぐに救急車を呼んで
六甲病院に運び込まれた。
病院では、MRIか何かの検査が行われ、
ここよりも、脳外科関係の拠点病院である神戸赤十字病院が
いいということで、その日か、次の日かに、転院になった。
▼JR灘駅で3時に待ち合わせ、私はキキサカさんの
車に同乗して、いっしょに神戸赤十字病院に行くことに
した。
JR灘駅の駅舎は、木造で階段を上って跨線橋を渡り
上り・下りのホームへ降りるようになっていたのだが、
きょう灘駅でホームに降りたら全く勝手が違っていた。
コンコースが2階にあり、そこの改札を出ると
喫茶店のほか、何軒かの店舗があり、昔の面影は
どこにもない。
北側の階段をおりて、駅前のローターリーに出ると
もうキキサカさんは来ていて、運転席の窓を開けて
手を振っていた。
▼「誰から倒れたって連絡があったのっ?」と私は
キキサカさんに訊いた。
キキサカさんは、土曜日、すぐに私の携帯に電話したけど
つながらなかったという。
私の携帯の充電忘れは、ときどきある。
また、この部屋にいると、居間の本棚の所に、
ハンカチやティッシュや財布やらと、いっしょに置いている携帯は
鳴っても気づかぬことがある。
キキサカさんは、ときどき私の携帯がつながらないので、
それが不満ようで、2回繰り返し言った。
私は話題を変えるため、誰から連絡があったか、
もう一度、尋ねた。
▼「いゃー、それがママモトさん本人から、連絡してきたんだけど・・」
という。
「だったら、しゃべれるんだ!」と私は確認した。
キキサカさんは、ママモトさんと同い年で、同期入所。
今年、71歳になる。
キキサカさんは、2000年に退職してから、2回、
脳梗塞で倒れ、今はしゃべるときに時々、どもるような
調子になるが、それ以外はほとんど後遺症は見えない。
▼同じ病気の先輩だから、ママモトさんは、キキサカさんに
倒れた当日、病院から電話をしたのだろうか。
私なら、倒れても、2000年会の友達の、誰にも、そのことを
連絡したりはしないだろうなー、と思う。
たとえ死んだときでも、私は妻に、友達には積極的に知らせ
ないでほしいと思う。
そんなときは、相手の方から安否は訊いてくるはずだから・・、
と思う。
「私死にましたの知らせ、要りません。若し人が尋ね
ましたならば、はあ、あれは先頃なくなりました。
それでよいです。」
そう、妻セツに依頼した「
小泉八雲」のことを思い出していた。
▼病室のママモトさんは、病院着を左肩半分外した格好で、
点滴の管を左腕に通していた。
「元気そうやないの! どないしたん?」と私は尋ねた。
ママモトさんは、私がすでにキキサカさんから聞いていたことを
しゃべった。
「オレ、だから、前に奥さんとママモトちゃんを車に乗せて、
auの携帯電話ショップに行って、二人に同じ携帯電話、
持つようにさせたんヨ!」
とキキサカさんが、ちょっと言葉を詰まらせながら、ゆっくり
自慢話のようにしゃべった。
▼キキサカさんは、自分が脳梗塞で倒れたとき、携帯電話が
あったから、家族と連絡がとれ、一命をとりとめ、しかも
軽症で済んだことを話した。
そして、その教訓から、ママモトさん夫婦にも、携帯電話を
持たせた経緯を説明した。
「まぁ、今度は家で奥さんが居(お)ったからよかったけど、携帯は
絶対、いつも、もっとかなアカン!」と、
キキサカさんは、ママモトさんを諭した。
▼ママモトさんは、MRI検査の轟音のすることや、コープ共済に
加入しているので、入院1日につき幾らの給付がある、などと
話した。
「どうしょうか、忘年会?」
「ワワカミさんは、体調不調で花見大会は来れなかったし、
オオワシさんは、原因不明で脚が上がらんと言うとるし、
ルルバヤシさんは、癌で片肺切除しても、無理して
三木から出てくるけど・・・」
「そーうやなー、どうしょうか?」
「今晩にでも、みんなに電話してみようか、どうするかって?」
▼ママモトさんは、全く元気そうで、
ママモトさんがキキサカさんに電話したのは、
退屈で、話し相手がほしかったのかも知れない
と、思た。
キキサカさんは、JRの灘駅でいい、というのに
三宮まで私を送ってくれた。
二人とも、見舞いのことは1件落着し、
しばらくタバコを吸っていなかったから、
喫茶店に寄ろう、という事になった。
三宮地下駐車場に車を止め、上にあがると
東遊園地の広場に、ルミナリエの大きな城のような
骨組が出来上がっていた。
▼神戸市庁舎の24階の、展望喫茶室で、
暮れかかる神戸の海と山を眺めた。
2000年会の忘年会のあと、
みんなで、元町・大丸前から東遊園地まで
長い行列に従って、まばゆく光るルミナリエを
くぐっていったのを思い出した。
今年は2013年、もう来月は12月。
1年も早かったが、13年も何だか早かった
ような気もする。
今年のルミナリエの電飾は、LEDになるのだろか?
それとも、すでにLEDに替わっているのだろうか?
もう、しばらくルミナリエを見てないナー、
と思った。
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
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