mixiユーザー(id:2230131)

2013年10月07日21:44

36 view

Right Thoughts, Right Words, Right Action/Franz Ferdinand

 フランツ・フェルディナンドの最新作『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』からカットされたシングル“ライト・アクション”をはじめて聴いたときは、正直言って、もうこれで彼らのキャリアは終わったんじゃないかと、本気でそう思うほど落胆したことを覚えている。

 “テイク・ミー・アウト”から“ドゥー・ユー・ウォント・トゥ”、そして“ユリシーズ”まで、彼らのアルバムには誰もが腰を振らずにはいられないような必殺ダンス・チューンが必ず1曲は入っていた。その1曲の存在感こそがゼロ年代、ひいては群雄割拠のUKインディ・ロック界においてフランツを生きながらえさせた最大の勝因だと思っている。
 もちろん他が駄曲だったと言っているわけではない。だが、フランツのような「女の子を躍らせるロック」を命題に掲げているようなポップ・バンドにとって必要なのは、アルバム自体の厳密な完成度よりも、プロモーション・ビデオを作ったときにも受けが良い、前述したような「必殺の一撃」なのだ。

 「正しい考え、正しい言葉、正しい行動」と題された4年ぶりの新作は、そういった一撃が収録されてないはじめての作品だったのは、残念ながら誰もが認める事実だろう。タイトル通り、フランツがフランツらしく正しく、真っ当な姿に立ち返ろうとした結果、その生真面目さゆえに安全パイで収まってしまった感は否めなく、前作『トゥナイト』でちょっと発揮しかけた実験精神もしぼんでいる。新味と言えば、“ラヴ・イルミテーション”、“スタンド・オン・ザ・ホライズン”といった一部のナンバーでホーンが用いられてることくらいだろうか(もっともこの楽しいアレンジも、外部プロデューサーの入れ知恵らしいが)。

 こういった特筆すべきことがないアルバムというのは、大概において評論家受けが宜しくない。予想通り、ピッチフォークでは辛口の評価が寄せられている。
 ただ、必殺の一撃こそ無いかもしれないが、楽曲単位の「打点」はさりげに高いし、今回もフランツならではの一聴しただけで聴衆を虜にするメロディのキャッチーさと、強烈なフックが随所に盛り込まれている。たとえば“バレット”でのヤケクソ気味な(ただしディティールはしっかりと計算されている)パンキッシュなロックを聴いたときは、僕もまだこういったタイプの曲で胸が躍ってしまうんだと自分で自分が嬉しかった。

 あわよくば、4年なんて待たずにもっと早く聞きたかった一枚。ほんと、こういう類の明朗快活なロック・ミュージックというのは、1年に1作くらいでコンスタントにリリースしなきゃ意味がないんだから!(と、ファンはいつも作り手の苦労も知らずに要求し続ける)
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2013年10月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

最近の日記

もっと見る