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2013年03月29日23:36

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映画『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

3/29(金)、この日が興行ラストの映画『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』を、TOHOシネマズ浜松で観る。
擦れ違うものと想っていた相手と、最後のチャンスに巡り遭えて会話ができたような、そんな感がある、いつもと違う場所で。

夫に死なれ、職を失い、老後の為のに溜めた資金の半分をなくし、・・・それぞれ老境に入った英国の男女7人が、遠い南のインド、格安の滞在型ホテルで暮す事にした。
しかし、ホテルの宣伝文句は先進国の常識からすれば、まあ”騙し”の類で、現地に着いた彼等は夢とのギャップにショックを隠せない。
インドの十数億の民の喧騒と熱気、カラフルな色彩、踊り出さんばかりの音楽、北国の紳士淑女達の常識や住環境とはまるで違う。
ゴージャスな筈のホテルは、電話も通じなければ、水道も水漏り、ドアのない部屋もある始末。
亡父の遺志を継いでホテルを再興しようとする若い支配人は、”将来像を(広告に)載せた。インドには最後には万事めでたしという諺がある”、と悪びれない。
現実と夢、そして異文化、異言語、異なる常識、異なる気候、ギャップは様々な形で彼等の上に負い被さる。
老いに到ってからの彼等のそうした異界との衝突によるショック、その対応の様々な形を、監督ジョン・マッデンは、ユーモアを込めて描き出した。

社会は、老人達を標準的な枠にはめ込み、その中に追いやろうとする。
静かで主張せず、邪魔にならない事。色恋等もっての外。諦観が最重要。資金は次世代の為にこそ使うべし。死ぬ時は、病まずポックリと。
老人側も、それに従う事が美徳とつい信じてきた。
しかし、先進国共通の高齢化現象は、そうした旧来の老いの姿形を変えつつある。

望まなかったギャップの中で、しかし、そこから歩き出そうとする人もいれば、それなりに愉しもうとする人も、そして、頑なに拒否し閉じ篭ろうとする人もいる。
老いは不変化とイコールではない。老いは、ただ死の隣接地というばかりではない。
いくつになっても、変化は身に訪れる。その変化に対して、どう対応するか、それは彼等の人生観そのものであるし、培ってきたパワーでもあるだろう。
ある夫婦は、互いの価値観の相違の大きさにここに到って気付き、別れを余儀なくさせられる。変化は様々な形でやってくる。

物語は多分にご都合主義的だが、老いても自分を束縛する必要がない事を、映画は教えてくれる。
いくつになっても、新しい人生を始める事ができる。そのように人生を捉えられる人は、いつ迄も美しい。


監督 ジョン・マッデン
原作 デボラ・モガー『These Foolish Things』
脚本 オル・パーカー
撮影 ベン・デイヴィス
編集 クリス・ギル
音楽 トーマス・ニューマン

出演 ジュディ・デンチ,トム・ウィルキンソン,ビル・ナイ,ペネロープ・ウィルトン,マギー・スミス,セリア・イムリー,ロナルド・ピックアップ,デヴ・パテル他

2011年/英・米・アラブ首長国連邦合作
 
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