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2013年03月24日23:51

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桂枝雀 落語『寝床』『代書』

DVD<枝雀落語大全>第1集の演題は『寝床』と『代書』である。
第1集に採り上げるだけあって、いずれも枝雀の十八番。

『寝床』…東京国立劇場で行われたTBS「落語特選会」から収録、1986(昭和61)年10/13に放送された。

この噺は東京でも名人と言われた八代目桂文楽の十八番だったが、実は、元々上方で始まったもの。

大家の旦那の趣味が浄瑠璃(義太夫語り)。しかし、ヘタな浄瑠璃を聞かされる事は、長いだけあって、相当な苦痛を伴う。だが、本人がそれを自覚していないところにちぐはぐが生じ、おかしみが生まれる。カラオケと同じで、語る側の歓びは、聞いてくれる人がいてこそなのだ。
聞き手は、皆、大家に家を借りている店子、または彼が経営する店の店員達であって、この上下関係がまた一層やっかいのネタである。

店員の久七は、店子達や店の番頭,丁稚等の間を駆けずり回って聴衆を集めようとするが、皆、用事やら仮病やらで来ない。
久七が尤もな理由を作って話す1人々々の言い訳と、旦那の次第に尻つぼみになる反応が可笑しい。
旦那も、皆から自分の浄瑠璃が好かれていない事を、やっと気付く。

旦那と久七の虚々実々の押したり引いたりの遣り取り、それに後ろから奉公人の小声のちゃちゃが入り、会話は3Dの奥行きを呈する。

旦那は興奮し、遂に禁じ手を繰り出す、つまり、それなら貸し家から出て行け、借金を返せ、店をクビにしてやる、と。
嘘を並べていた連中が1人聞きに来る、2人聞きに来ると態度を変え、旦那は次第に相好を崩していく。げんきんなものだ。
これが、先程の尻つぼみの反応と対照的に、デクレッシェンドとクレッシェンドを構成している。

やがて旦那の浄瑠璃語りが始まる。聞き手は浄瑠璃はそっちのけ、出された酒や弁当を貰いながら、旦那の趣味が如何に他人迷惑か、それぞれ言いたい放題。
やおら浄瑠璃の一節が空中を飛んでくると、当ったら病気になるぞと、必死に避ける様の立体的表現が実に見事。
歌う旦那、悪口を叩く者、酒に酔って寝てしまう者、具合が悪くなって倒れる者、枝雀大熱演である。


『代書』…関西テレビ<となりnoとなり(米朝一門会)>より収録、1992(平成4)年8/14放送。
 
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