学生時代の文学仲間との1泊の例会、今年は上野の水月ホテル鷗外荘で、12/17〜18に行われる事となった。
泊まる場所はともかく、折角の上京だから、というので、私は、竹橋の東京国立近代美術館で開かれている「ぬぐ絵画」展に行こうと提案した。
他のメンバーは東京近辺に住んでいる為、「折角の上京」という考えがない。ただ集まって酒を酌み交わせばそれでよい、と、そんな風だ。
遠方から足代をかけて出掛けて行くからには、何か甲斐のある上京にしたいと思うのは、私1人。
提案に仲間から格別の反対もなく、12/17(土)12:00過ぎ、近代美術館前で落ち合う事とした。
展覧会の正式タイトルは「ぬぐ絵画〜日本のヌード1880-1945」である。
1880年とは明治13年、1945年は昭和20年、第2次大戦が終わった年にあたる。
会期は、11/15〜翌2012年1/15迄。
一般入場料850円。私は、ホームページから割引券を仲間の分もプリントアウトして持っていった。50円割り引かれ800円になったが、仲間からはたった50円か、と。(笑)
「はだかの人物を美術作品として描き表し、それを公の場で鑑賞するという風習」(当展図録より)は、ギリシア・ローマを起源とするヨーロッパ文化の伝統の中にこそ存在するもので、明治初期の日本人にそんな理解がある訳もなく、ヌードは「異文化」として「昭和初期に定着するまで(中略)、描く人(画家)、見る人(鑑賞者)、取り締まる人(警察)の間に多くの葛藤」を生じさせる事となった。
芸術とエロスと猥褻の問題を引き起こした代表的作品約100点を紹介して、文化の衝突に思いをやるのが、この展覧会の狙いである。
構成は以下の通りである。
�� はだかを作る
�� はだかを壊す
�� もう一度、はだかを作る
もう少し細分すると、�記兇蓮�3つに分けられている。�靴呂修里泙沺�
��-1 入浴と留学
��-2 はだかの教育
��-3 黒田清輝とはだか
��-1 萬鉄五郎とはだか
��-2 恋するはだか
��-3 古賀春江とはだか・熊谷守一とはだか
�気任蓮◆峽歃僂箸靴討里呂世�」を世人に理解させる為に明治の画家達がなした努力の様を、作品を通して紹介する。
江戸〜明治期にはだかが日本に存在しなかった訳ではない。銭湯というものがあったし、混浴も一般的だった。その様が描かれているが、肉体は類型的な形をしていて、西洋のはだかとは全く違う。
西洋画を目指す人達は、留学して技術を身に付けた。その後、東京美術学校は、いち早く人体を描く教育を採り入れるようになった。
ヨーロッパで学んで帰った画家のうち、ヌードを日本に定着させる為の努力をした功労者は、何と言っても黒田清輝である。
黒田ははだかからエロスも猥褻も取り去り、アカデミックなヌードを描いた。日本人にはない7.5等身のプロポーション。いやらしさは全くない、勿論ヘアーもない。それでも、彼の絵の1部は、展覧会で下半身に布が掛けられたりした。
�供�1900年代に入ると、その黒田の画風に反抗する人達が出てくる。萬鉄五郎に反黒田の風を見る。
そして、大正期に入ると、はだかにエロティシズムを取り戻す動きと伴に、西洋の前衛美術の影響下、キュビスムやシュルレアリスム等、造形実験がはだかにも持ち込まれる。
�掘⊂赦造砲覆襪函�壊されたはだかをもう一度組み立てようとする動きが現れる。
はだかは自然の中から、屋内に持ち込まれる。「裸婦」という言葉を、梅原龍三郎が作る。安井曽太郎や小出楢重等によって、日本の生活の中で、日本人のはだかが描かれる。
写真1は、黒田清輝の『野辺』(1907)
写真2は、萬鉄五郎の『裸体美人』(1912)
萬の『裸体美人』の構図は、明らかに黒田の『野辺』から来ている。女の腕の形、横たわる場所等、極めてよく似ている。『野辺』では女の下半身は敢えて描かれていないが、少しだけ赤い着物が見える。全身を描けば、萬の作品のようだったかもしれない(笑)。しかし、絵から感受される世界は、何と異なる事だろう。
写真3は、古賀春江の『鳥籠』(1929)
この日、14:00から、当館主任研究員の大谷省吾によるギャラリートークがあり、参加した。
古賀春江、男である！
1985(明治28)年生まれ、1933(昭和8)年没。人間関係と作品にまつわる興味深い話だった。
近代美術館の4階常設展には代表作の『海』(1929)も展示されている。
豊富な常設展の方も、「ぬぐ絵画」企画に合わせ、「ぬぐコレクション」に模様替えされており、通して観ると大変面白い。
この日の鑑賞の拾いものは、村山槐多と甲斐庄楠音だった。
12/3、岡崎市美術博物館で観た「村山槐多の全貌」展で展示されていなかった『尿する裸僧』(1915)と『裸婦』(1914-15)が、この「ぬぐ絵画」展に展示されていたのだ。偶然に感謝！
これで、本当に槐多の全貌を私は観る事ができた(と思う)。
甲斐庄はこれ迄にも何度かmixiで書いてきた。
ここでは詳細に触れるゆとりはない。
展示されていたのは『裸婦』(1921)2枚。両方共実物を観たのは初めて。
村山槐多も甲斐庄楠音も�蕎�-2に含まれる。
近代美術館を出て、上野へ。
鷗外荘は、森鷗外の旧邸を中庭に取り囲んで、5階建て程のホテルになっている。
料理は懐石で、コースは13品あった。
“鷗外ワイン”を飲みながら、料理を満喫。
当日は、ここでも偶然のサプライズがあった。
レストランで、藝大4年生によるヴァイオリンとフルート、デュオの生演奏が入ったのだ。
ドビュッシーやエルガー,クライスラー等、そして、日本唱歌のアレンジも。
舌だけでなく、耳でも堪能した。
温泉は茶色の重ケイ酸泉。あまり熱くはない。
食事前と呑んだ後、そして翌朝、私は3度お風呂を愉しんだ。
翌日は下町散策。
コースだけ書いて今日のレポートは終える事とする。
鷗外旧邸の見学。
徒歩にて根津神社へ。
珍しい木造3階建ての歴史的建造物、串揚げ「はん亭」。
地下鉄千代田線で町屋、都電に乗り換えて三ノ輪、浄閑寺(別名投込寺)。遊女達の墓の隅に永井荷風の碑。
徒歩にて、旧吉原、見返り柳と大門跡。
吉原弁財天に寄り、日本堤を歩いて浅草へ。
神谷バーで”デンキブラン”。生ビールと一緒に呑むのが通だとか。
吾妻橋からスカイツリーを眺める。
仲見世を物色後、店浅草駅で解散。
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