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2011年06月14日23:28

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楽器博物館イヴニングサロン「バッハ〜無伴奏チェロ組曲」

6/13(月)19:00〜、浜松市楽器博物館主催のミニコンサート<イヴニングサロン>シリーズより、「バッハ〜無伴奏チェロ組曲」を聴いてきた。
会場は、6/10の日記で紹介した、同館天空ホールである。先日のレクチャーコンサートは、椅子の設置が50程だったが、当夜は約100だった。

演奏者は武澤秀平。
彼は現在、新日本フィルハーモニー交響楽団のフォアシュピーラーだそうである。”フォアシュピーラー”という語は初めて聞いたが、首席をサポートする立場らしい。つまりチェロのセカンドマスターという事。
モダン・チェロ以外に、バロック・チェロ,バリトン,ヴィオラ・ダ・ガンバを演奏する。これら古楽器で、バッハ・コレギウム・ジャパン他に参加している。
見たところ若そうだが、プロフィールには記載がない。
館長の嶋和彦によると、同館制作のCDでは、古楽器アンサンブルで何度も加わってもらっている由。


プログラムはタイトルの通りJ・S・バッハの無伴奏チェロ組曲から、第6番ニ長調BWV1012、第1番ト長調BWV1007、第3番ハ長調BWV1009。
6,1,3と並べた訳は、これも嶋館長の説明によると、実は6/13の日付に合わせた、との事で、笑いを取った。

6番のみ、楽器博物館所蔵のヴィオロンチェロ・ピッコロで、他は本人のモダン・チェロでの演奏。

ヴィオロンチェロ・ピッコロはピッコロ・チェロとも通称され、名の通り、サイズが小さいチェロで、バロック時代に使用された。
弦は5本で、モダン・チェロの第1弦A3の上にE4の弦を追加したイメージ。
実は、バッハの無伴奏チェロ組曲のオリジナルの第6番は、このヴィオロンチェロ・ピッコロの為に作曲されたものである。
(ついでに言うと、同第5番は、通常のチェロの第1弦を全音低いG3に調弦して演奏するという変則になっている。)

この浜松市楽器博物館所蔵のヴィオロンチェロ・ピッコロは、全長91cmで、現代楽器の125cmに比べると大分小さい。
エンドピンはなく、両膝の内側でボディを支える。尤も、モダン・チェロもエンドピンを装備したのは19世紀末だとの事。
製作者はマッテオ・ゴフリラー(ヴェネツィア?)で、1720年頃作られたもの。

またここで”実は”と言わざるを得ないのだが、この楽器、当夜が初めての舞台出演なのだそうだ。つまり、楽器本体の修復が終わったばかりという事で、これは武澤にとっては気の毒な事だった。

楽器の物理的な修復は、まあ難しい事ではないが、音のバランスを合わせるとか、響きを作るとか、音程を合わせるとかいったレベルの事は大変困難が伴う。武澤も当夜の演奏をokしたのだからやむを得ないが、どの位の期間彼の手許にあったのだろうか。また、具合の悪い所を指摘して何度か修復者との間を行ったり来たりさせたのだろうか。
ともかく、音程が合わない、音が響かない。
元々ガット弦は音程が合わせにくいし、開放弦で合っても、上の方のポジションで音が合わなくなる事は日常茶飯事である。それをごまかしながら、微調整しながら演奏するのだ。
それを、修復上がりの楽器で演奏するというのだから、武澤の困難は推して知るべし。1度は、曲の途中で演奏をストップし、調弦をし直した。
また和音も弾きにくそうだった。為に、ガヴォット等、流麗なあのガヴォット舞曲のリズムには全くならなかった。
何とも気の毒な第6番だった。

第1番からは、自身のモダン・チェロに持ち替え、活き活きと伸びやかな演奏になり、本人の表情も和んだ。

後から振り返ると、6,1,3のプログラム順は、6/13という洒落よりも、最初に完成度の低い演奏を済ませてしまうしかない、という武澤の覚悟だったかもしれない。そんな風に思われたのだった。


無伴奏チェロ組曲は、全曲、プレリュード,アルマンド,クーラント,サラバンドと進めて、5番目の舞曲を、メヌエットにするかブーレにするかガヴォットにするかで変化を持たせ、最後を共にジーグで終わらせる構造になっている。
当夜の選択は、メヌエット,ブーレ,ガヴォットの入った組曲を1つずつという、武澤の配慮があった事を付け加えておく。

アンコールは、第1番のメヌエットだった。
 
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