■下巻、終わる
●けさTVのニュースを見ていたら、見覚えのある寿司屋が
画面に映っている。 おゃっと思ったら「寿司忠」と看板の
文字がアップになった。間違いなく、毎日の通勤時にその前を
通る、多聞通り交差点の北東角の寿司屋であった。
きょうの午前0時45分ごろ、スナック経営の女性(40歳)の運転する乗用車が
雨でスリップして寿司屋に突っ込み、店の前を歩いていた女性(38歳)と
店の板前(30歳)が重軽傷を負い、店は大破した。
まえ日記に書いた
「寿司屋」だ。
職場に行く途中、見ると「寿司忠」はブルーシートでおおわれていた。
道路の中央分離帯に三脚を立てて現場を撮影している男と、その横に
ニュース原稿のような紙切れを、手に丸めてもって、傘をさしている若い女の子が
立っていた。
●帰り、またその交差点に来た。
寿司屋と反対側の西の、たまに寄る花の名前のついた喫茶店で
「富士日記」下巻、最後の50ページくらいを読んだ。
いつもより長いこと、喫茶店にいた。
読み終わるころ、店内には客がいなくなっていた。
客がいなくなると、この店は午後7時前でも閉店準備の片づけを
はじめる。
前のときのように、きょうも涙がじわっと湧いてきたが
悲しいというより、静謐な充足感のある涙だった。
●店を出て信号を渡って、寿司屋を見ると、朝と同じように
ブルーシートがかかっていたが、青いシートの上から
蛍光灯の光がもれ、中に人がいるようだった。
店の中を片付けているのかもしれないと思った。
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