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2009年06月04日01:49

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●うみうし独語(353)/■身心快楽(29)

■身心快楽(29)

 ●「富士日記」昭和四十五年五月

   ▼五月二十七日(水) 晴、風つよし
    夢の中でうぐいすが啼いているようだったが、眼がさめると、そのまま
    夢から続いて庭で啼いている。
    尖端が紅い松の芽は鶴の首のように伸びて、いっせいに西を向き
    風に吹かれている。庭いちめんにすみれが咲いている。ぼけも満開。
    粉っぽい、こやし臭い、お化粧くさい匂いが漂っている。すみれの匂いだ。

      ・・・・

    十時ごろ本栖湖へ。主人同乗。
    富士山は雪が少なくなった。肌は鉄色に輝いている。真夏の色だ。
    風はつよい。陽射しは烈しい。
    下部へのトンネルの手前を下って一周する。本栖湖は浪立ち、明るいインクの
    色をしている。

     ・・・・

    湖をとりかこむ山々の雑木は若緑にもえ上がって、湖水の蒸気で煙っている。
    白い花が咲いていたのはアカシアらしい。
    緑の洞のような湿った道を、運転していることも忘れてぼんやりと抜け、
    キャンプ場の拡がる岸に出る。眠気が襲ってくるのは、若葉がふきかけてくる
    酸素のせいだ。一周する間、車にまったくすれちがわない。
    夢うつつに運転していても事故も起きない。
    「あら、私はハンドルのところに手をやって車を運転していたのだっけ」と
    思う。


 ●日常は平凡なものである。そんなに変ったことがあるのでもない。

  だるく疲れてぼんやりしている。

  眠気が襲ってくるのは、若葉の吹きかける酸素のせいかどうかしらないが、
  日常はそんなものである。

  

    酒屋で。ぶどう酒、煮豆、サントリーレッド一本五百円、夏みかん三個
    二百四十円。
    ガソリン代九百円。

     ・・・・

    夜、ごはん、麻婆豆腐、小鯛煮付ののこり。
    麻婆豆腐の唐辛子が少し入れすぎで、主人ひどく汗を出す。





   ▼五月二十八日(木) 晴、風なし
    朝 ごはん、中華風オムレツ、大根味噌汁、大根おろし、しらす。
    昼 パン、牛乳、ソーセージ(百合子)、ごはん、はんぺん、清し汁、
    大根おろし(主人)。
    夜 お雑煮(とり団子とみつば、粟餅)。

    風がないので、うち中のふとんと毛布を干す。うぐいすはあまり啼かない。
    トッキョキョカキョクと啼く鳥が多くなった。畑の大根の芽は、
    出るとすぐ虫が全部たべてしまった。

     ・・・・


 ●以上が、昭和四十五年五月の三回の「山行き」であった。




  
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