■身心快楽(26)
●6月2日(火)・<続> 夜中、風なしときどきウグイスの声
きょうも帰ってきて、寝た。
妻はシャンソンの日だ。
八月のリサイタルの曲目や、もう一人と歌う順番など決めてきたらしい。
帰り、いつものようにシャンソン仲間のうちに寄って晩飯を食べ、
田舎から送ってきたというスモモをもらってきた。
「あんた、晩ごはん食べた?」と聞くから、「寝てた」と言うと
「なんでやねん、冷や汁まだあったやろう・・?」と言う。
冷や汁は冷蔵庫の「あずみの水」を加えても
おいしかった。 というより、前よりおいしくなった。
「よく出しがとれてるじゃん・・」と私は言った。
食後にスモモを食べた。
今頃は桃も桃割れしていない品種が多いように思うが
このスモモは桃割れしていて、先がキューピーの髪の毛のように
とんがっていた。
一口だけ甘く、あとは酸っぱく、野生の渋みと苦味も残った。
子供のころ、淡路に住んでいて「巴旦杏」といっていたが、
まだ熟れるの待ちかねて採ってきて食べていたら、それを見て
祖母が「ああ、酸っぱ! ・・」っと歯のなくなった口をすぼめ
皺だらけにして、私よりもっと酸っぱそうにしたのを思い出した。
●風呂にも入った。あとは寝るだけ。
妻は「なんでも鑑定団」のあと、「数独」やらずに寝た。
さっき風呂に行ったみたい。
日付を「6月3日」したものかどうか、と少し迷う。
夜がまだ明けないので「6月2日」にした。
●「富士日記」昭和四十五年五月
5月の2回目は、5月14日から17日まで。
▼五月十四日(木) うすぐもり
前八時半、東京を出る。朝食(主人だけ)ごはん、豚汁、大根おろし、
生鮭の照り焼きですませてから。私は牛乳を飲んでから。
若葉の中央道。大月から先のれんげの咲き続く田。ちらちらするほどの
眠気のまま山へ着く。
昼 シューマイ弁当(私)、ふかしパン(主人)、野菜スープ。
庭の桜はほとんど散って、赤い萼だけが残っている。
夜 おでん、桜めし(主人)。
二時ごろからずーっと眠りつづける。
子供の私が眠っている夢をみたあと、猫の私が夢を見ながら
眠りつづける。眼がさめたら夜になっていた。
▼五月十五日(金) 晴
昼前、買出しに下る。富士吉田に行く。
大関(一級酒)、ぶどう酒一升、サントリーレッド、合計千六百円。
いちご百八十円、サバ二十五円、わかめ、パン粉、パン六十円、
かつぶし百七十円、煮豆五十円。
・・・・
●「大関」や「サントリーレッド」は初出である。
「ぶどう酒」はこれまでもあった。いつもの缶ビール・瓶ビールがない。
山荘に、買い置きがまだあったのだろうか。
・・・
事件が起きるのは、この買い物を終え、駐車場を出るときであった。
あっ、妻が風呂から出てくる音。
それでは、また明日か、今日か。
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