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2006年03月28日03:53

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●朧霞抄 (11)/■寝て起きて

■日を失う

 ●学生時代だったか、勤めだしてからだったか、
  また、どんな事件だったか、なぜそうなったのか、
  それもわからない。

  ただ、「日を失う」という感覚だけは残っている。
  
  夢のように、私はうとうとしていた。
  病気といえば、病気のようだったが、しかし、学校に行くなり、
  仕事に行くなり、もし、しようと思えばできた。


  しかし、私は布団の中にいた。
  布団の中で、「ずる休み」をしている、自分のある部分に気づいて
  いた。

  思い切って、起き上がれば、布団から出られないことはない。
  しかし、生暖かい布団に、居心地の悪さを感じながら、ずるずると
  とどまっていた。


  あれは、何のときだったのだろう。



 ●そのとき、私は思った。「日を失う」という、途方もない深みに
  落ちていく自分のことを。


  それは、時間をムダにしている、一日を有効に使っていない、
  という「ロス」に対する贖罪の念ともちがっていた。


  きょうという日は二度とやってこない、という意識でもない。
  時は流れるもので、「今」はこの瞬間しかない、という意識でも
  ない。



  それは、ダリの絵だったか、砂漠のサボテンか何かに掛けられた
  ベロンとした「時計」のように、「時間」そのものが溶解していく
  ような感覚だった。



 ●「日を失う」、それは「時間を失う」と言ってもいいような
  奈落の底にゆっくり引きずり込まれていくような感じだった。


  私はだらしなく、それに抵抗することもなく、不安を感じながら、
  ずるずると深みにはまっていくのを知りつつ、布団の中にいた。



 ●さぼった勉学や仕事、あるいは、失った日々や時間も、もし、それが
  そのときにやるべき何かをしなかった、ということなら、それは
  「失ったもの」を取り返すことができる。「ロス」は「ロス」として
  それをカバーし、失った日々や時間はたとえもどらなくても、
  それを補填することはできる。


  しかし、うとうとと布団の中で寝ていて起き上がらない私は
  「時間」そのもの、「日」そのものを失い、時間や、朝・昼・夜の
  ある「日を失う」意識に陥った。


 ●どうしてだろう。こんなことを書くなんて。

  さっきまで寝てて、のこのこ起きてきて、ぜんぜん別のことを
  書こうとしていたのに、書きはじめたら、こんなものを書いてしまった。



  私はふと、私の残された日々、そんなことを思い、それと
  急に思い出した過去の「ある感覚」と対比したのかもしれない。



  時間の失われた世界、日付のない世界を想像してみよう。
  それは、精神病理の世界の「深い闇」に落ち込んでいくようだ。


  私は、あのとき、うとうとしながら、布団から起き出さないで
  そんな「深い闇」の淵に立っていたのかもしれない。



  のこのこ起き出してきて、いま、そんなことを思い出している。


  のこのこでもいい。起き上がってくる。現実を手放さない。
  もし、あのまま、ずるずると布団の中にいたら、どうなって
  いたのだろう。


  「深い闇」の中で、起き出さず、「日を失った」まま、ずるずると
  現実から遠ざかっていく。


  痴呆とは、そんな世界に入っていくことなのかもしれない。



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