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2014年12月02日08:40

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読書日記No.781(現代の百人一首)

■永田和宏「現代秀歌」2014年岩波新書

私が日本の短詩型文学が好きだということは、マイミクさんは
ご存知で、ときどき、この読書日記でもとりあげている。

日本の短詩型文学といえば、代表的には短歌・俳句だが、最近
気づいたが、私はどうも、俳句より短歌の方が好きなようである。

五七五と五七五七七。

わずか七七しか違わないが、その描かれる世界は全く異なって
いて、短歌の方が、感情の表現に優れているのですね。

今回は、出たばかりの岩波新書を、手に取った。

帯の文句。

“今後100年 読まれ続けて欲しい 秀歌100首”

著者の永田和宏さんは、細胞生物学者であり歌人であり、同じく
歌人でもあった、故・河野裕子さんの旦那さん。

現在、朝日新聞歌壇の選者でもある。

本書の惹句も紹介。

“大好評を得た『近代秀歌』の続篇として、「今後100年読まれ続けて欲しい」、
主として戦後の秀歌100首を編む。佐藤佐太郎や近藤芳美から、塚本邦雄、
寺山修司、岡井隆、そして俵万智から穂村弘へ。”

“大きな変化を経た時代に、歌人たちは何を感じ、何を試みてきたか?
著者ならではの視座から、歌の現在を、そして未来を語る一冊。 ”

馴染んでいる、寺山修司、俵万智、穂村弘、山崎方代の収録歌は以下。

・海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり  寺山修司
・「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ  俵万智
・終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて   穂村弘
・こんなにも湯呑茶碗はあたたかくしどろもどろに吾はおるなり   山崎方代

いずれも代表作のひとつだが、もっといい歌があるのではと思えば、
その歌人の個人歌集を紐解けばいい。

私は、単なる素人の短歌鑑賞好みなので、本格的に短歌を学んだことも
ないが、本書に収録されて、心に残った歌を、10首紹介。

・たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか  河野裕子
・観覧車回れよ回れ思ひ出は君には一日(ひとひ)我には一生(ひとよ) 栗木京子
・ごろすけほう心ほほけてごろすけほうしんじついとしいごろすけほう  岡野弘彦
・さらば象さらば抹香鯨たち酔いて歌えど日は高きかも          佐々木幸綱
・WWW(ウェッブ)のかなたぐんぐん朝はきて無量大数の脳が脳呼ぶ  坂井修一
・そんなにいい子でいなくていいからそのままでいいからおまへのままがいいから
                                             小島ゆかり
・立つ瀬なき寄る辺なき日のお父さんは二丁目角の書肆にこそをれ   島田修三
・ひまはりのアンダルシアはとほけれどとほけれどアンダルシアのひまはり 永井陽子
・洪水はある日海より至るべし断崖に立つ電話ボックス           内藤明
・サンチョ・パンサ思ひつつ来て何かかなしサンチョ・パンサは降る花見上ぐ 成瀬有

日本人に生まれてよかったと、思えるひとときである♪
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