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2023年04月06日20:07

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「科学者とは何か」 (村上陽一郎著、新潮新書)

古代ギリシャにおいて生まれた知識職能集団から発展して、19世紀社会に「科学者」と呼ばれる人々が誕生した時、そこには顕著な特徴があった。一言でいえば無責任体制だ。ごく限られた狭い閉じた社会の中で、知的興味を満たせばよかった。しかし、その後は科学研究に伴う責任をどう取るべきかという考え方が、科学者の間にも生まれてくる。科学者としての倫理問題はもちろん、社会問題とどう関わっていくのかを無視しては存在しえないようになっていくのである。そのため、その分野の専門家だけが理解できればいいのはなく、近年は一般に人にもその内容を説明できることが科学者にも求められているのだ。まさに今も問われ続けている課題である。


●「毒をもって毒を制す 薬剤師・毒島花織の名推理」 (塔山郁著、宝島社文庫)

「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズの1つ。身近に起きた不思議な出来事を、名推理で解決する薬剤師の花織。アルコール依存症の男にある魔法をかけたら、急に「酒がまずい」と言い出したことがあった。その「魔法」を父にもかけてくれればと相談する女性。しかし、どのような「魔法」だったのかは分からない。そこを断片的な情報から「魔法」の正体に気付く花織。また、頻繁に薬局に来る女性。子供のための薬の処方を求めてくるのだが、その真の意図は? そこも花織の名推理で判明して、花織の的確なアドバイスで立ち直った女性。そして薬局近くのホテルで起こった従業員の集団発熱。COVID-19を疑うが、状況をいろいろと確認してみるとどうやら別の原因だったようで...。このシリーズ、なかなか面白いと思う。


●「まぼろしのパン屋」 (松宮宏著、徳間文庫)

初めて名前を見る作家だったが、書店でなんとなく面白そうな気がして手に取った本。標題作の「まぼろしのパン屋」の他、「ホルモンと薔薇」、「こころの帰る場所」の、計3編の短編集。大手私鉄大東京電鉄(明らかに東急電鉄がモデル)に勤める高橋は、開発事業の失敗で左遷された責任者の後釜として抜擢され、何が議題かも分からないまま会議に出る毎日。そんな中、電車の中で見知らぬ老女からパンをもらう。このパンはつきみ野にある老舗のパン屋のものだったが、パンをくれた老女は5年前に亡くなっていたという。この不思議な出会いが、高橋の人生を変え、最後は大手電鉄会社を辞めて、このパン屋を継ぐことになった。「ホルモンと薔薇」は、神戸の小さな酒屋での話。大腸外科医の村岡は、手術のあとはホルモン料理をつまむのが日課。人間の腸を見たあと、ホルモン料理とは...。そんなホルモンが、ひったくり犯を捕まえるのに役立つとは。「こころの帰る場所」は姫路の武闘派ヤンキーの話。相当の悪さをした「俺」が、JR西日本の車掌として全うに生きるようになる。しかし、昔のヤンキー気分が抜けずにいたが、それが逆に幸いし、名誉市民として表彰されるようになるとは。ちょっと不思議で暖かいお話し3編だ。


●「三種の神器」 (戸矢学著、河出文庫)

天皇の践祚に際し、皇位継承の正当な証しとして同時に継承される三種の神器、八尺瓊勾玉、八咫鏡、草薙剣。これら三種のうち唯一宮中にとどまり続けているのは八尺瓊勾玉のみで、アマテラスが同床共殿を命じたとされる八咫鏡は伊勢神宮に本体が鎮座し、天叢雲剣が変貌した草薙剣は熱田神宮に鎮座する。なぜ三種とも宮中にないのか。本来は「玉」が最重要であるはずなのに、歴史を振り返ると「鏡」が最重要視されているのはなぜか。そして、オロチを退治した十握剣ではなく、その体内から出てきた草薙剣が神器になっているのはなぜなのか。いろいろと不思議なことが出てくるのである。神器は宮中祭祀の中心となるものであり、天皇の起源にもつながるもので、改めて三種の神器の意味を解き明かそうと、深く考察した本である。


●「日本人のひるめし」 (酒井伸雄著、吉川弘文館)

今は一日三食が当たり前のようになっているが、そもそも「ひるめし」は、どのようにして誕生したのか。まずは古代の一日二食の時代から変遷していった経緯を説き、弁当がどのように誕生して移り変わっていったか、学校給食が食生活にどう影響していったか、外食産業がどのように生まれて発展していったか、などを詳しく説明していく。そして、昼食の代表格ともいえる麺類とカレーライスについて、日本の食生活に定着していった過程を述べる。外で仕事をしたり学校に通うことが当たり前になると、家族でいっしょに昼食をとることも少なくなってくる。それは昼食が主婦の管理下から離れ、家庭と社会の役割分担が進んだことも意味するのである。
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