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2019年01月26日20:42

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【音楽】 日本人作曲家の作品を聴く (その6)

午前中は晴れ、午後は曇りだったが、冷たい風が吹く寒い日。こんな日はつい出かけるのが億劫になり、自宅で音楽でも聴きながら過ごすことになる。そんな訳で、手持ちの日本人作曲家のCDを聴き直すシリーズの続きである。今日も存分に聴いた。

●伊福部昭
 ・ピアノと管弦楽のための協奏風交響曲
 ・ヴァイオリンと管弦楽のための協奏風狂詩曲

   舘野泉 (ピアノ)/大友直人指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 (1977)
   徳永二男 (ヴァイオリン)/広上淳一指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 (1977)

日本人作曲家では、CDの所有数も演奏会で聴いた回数も、最も多いのが伊福部だ。この2曲とも生でも聴いている。「協奏曲交響曲」は譜面が紛失したために、これを発展させた「リトミカ」や「タプカーラ」を作ったのだが、譜面が発見されて蘇演されることになったという曲だ。「リトミカ」や「タプカーラ」など、のちの伊福部作品に発展した部分を意識しながら聴くと何倍も楽しめる。「協奏風狂詩曲」は、そのままではないかという「ゴジラ」音型が登場するが、「ゴジラ」よりも「協奏風狂詩曲」の方が先である。もちろん「ゴジラ」だけではない、伊福部節満載の2曲だ。


●早坂文雄
 ・交響的組曲「ユーカラ」

   山田一雄指揮 日本フィルハーモニー交響楽団 (1986)

伊福部昭と同年で、学生時代から三浦淳史を含め3人で活動していた早坂。この曲も、北海道で育った(生まれは仙台)早坂らしく、アイヌ叙事詩「ユーカラ」に基づく組曲である。伊福部もアイヌに由来する音楽はいわば原点のようなものだが、2人の作風はだいぶ異なる。「描写的な叙事をせず、形而上的な現代の神話を描く」ことを意図した作品ということで、「動」の伊福部に対して「静」の早坂という対比が面白い。美しくもどこか物悲しい音楽だが、これが早坂の最後の作品になってしまった。


●林光
 ・交響曲 ト調
●安部幸明
 ・交響曲第2番
●石桁眞禮生
 ・ハと嬰へを基音とする交響曲

   上田仁指揮 東京交響楽団 (1954/1960/1956)

TBSの芸術祭参加作品として、上田仁指揮により初演された3作品である。三者三様の交響曲が楽しめる。林は、ショスタコーヴィチやプロコフィエフに傾倒している若い頃の作品ということで、第1楽章あたりがそんな雰囲気を感じる。第3楽章で日本民謡風のメロディーが登場する。安部は、冒頭の上昇音階が印象的で、冒頭から引き付けられる。「エクセルシオール!」のような出だしだ。第2楽章のコーラングレで奏でられるメロディーが素敵である。石桁は、12音列をかなり自由に用いて、日本伝統の5音音階と絡めた作品ということらしい。ところで、林と石桁の交響曲は新しい録音もあるが、安部の第2番はこの古い録音だけなのか。(第1番はある。) しかし、第2番は演奏会では聴いたので、あの時の録音があればCD化してもらいたいものだ。

   ―昼食休憩―

●外山雄三
 ・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
●箕作秋吉
 ・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
●尾崎宗吉
 ・提琴と洋琴のための奏鳴曲第三番
●吉田隆子
 ・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ ニ調

   荒井英治 (ヴァイオリン)/白石光隆 (ピアノ)  (2001)

4人の作曲家のヴァイオリンソナタを4曲収めたCDである。四者四様の、それぞれの作曲家の個性が光る作品が楽しめる。外山は「ラプソディー」をはじめとするオーケストラ曲が知られているが、こんな素敵な作品もあるのだ。やはりというか、日本民謡風のメロディーが現れる。箕作は、「和」の雰囲気があふれた好ましい響きの作品。30歳で夭折した尾崎の作品は、若さゆえの苦悩と爆発といった感じの作品か。治安維持法違反容疑で四度も逮捕された「抵抗のモダンガール」吉田のこの作品は、どこか暗く重い感じがするも、何かを見つめているような作品といえようか。


●池辺晉一郎
 ・交響曲第8番「大地/祈り」
 ・ピアノ協奏曲第3番〜左手のために「西風に寄せて」

   金聖響指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 (2013)
   舘野泉 (ピアノ)/野津如弘指揮 ラ・テンペスタ室内管弦楽団  (2013)

池辺が「破竹(はちく)の勢いで作った」という8番と9番のうちの8番。最初聴いた時に「なんだかよく分からない」と書いたまま放置していたので、久しぶりに聴く。第1楽章が「大地から」で第3楽章が「祈り」、間をつなぐのが第2楽章という構成だ。地の底から響くような「大地から」と、ひたすら静かな「祈り」に、池辺のいう「共存」が存在するかどうか聴く人に委ねられるそうだが、それはともかく、改めて聴くと結構良い。ピアノ協奏曲は舘野泉のために書かれた左手の曲。「西風」のイメージはいまひとつ不明だが、舘野氏のおかげで左手のための曲も多く作られているのはよいことだ。


●西村朗
 ・ケチャ
 ・ターラ
 ・瞑想のパドマ
 ・レゴン
 ・ティンパニ協奏曲

   パーカッション・グループ72 (1988)

打楽器音集である。バリ島の舞踏リズムのケチャ、インドの周期的リズムのターラ、仏教の聖なる花である紅色の蓮華(パドマ)の瞑想、インドネシアの初潮前の少女の踊りであるレゴン、そして締めくくりはティンパニを主体にした打楽器合奏のティンパニ協奏曲。いずれもアジア伝統の響きとリズムに彩られた作品で、アジア人の魂を揺さぶるような、奥底から何かが沸き上がってくるような音楽である。打楽器だけで、こうも豊かな音楽になるのである。(「ケチャ」は発声も伴うが。) アジア人だからこそ感じる音楽といえようか。

   ―ティータイム休憩―

●外山雄三
 ・京都幻想
●石井眞木
 ・笛独奏とオーケストラのための交響詩「祇王」―陰影の譜―
●林光
 ・吹きぬける夏風の祭
●新実徳英
 ・管弦楽のための「横豎」
●細川俊夫
 ・オーケストラのための「遠景」I

   小泉和裕指揮 京都市交響楽団/赤尾三千子 (横笛)  (1988)

「京都をイメージとした作品集」と題するCDであり、各作曲家の個性が出た「京都音楽」集である。外山は得意の民謡多用で、京都のイメージを静かな音楽で描く。石井は平家物語を題材にした音楽で、横笛も加わり、雅楽的雰囲気から徐々に高揚していき、最後は心静かに落ち着くという音楽だ。これはなかなか良い。林は夏の祭りが近付いてくるぞ、という雰囲気が感じられる曲で好ましい。新実は京都の深山幽谷に響き渡る音楽というイメージだろうか。細川はよく分からない...。


●池野成
 ・妖怪大戦争
 ・映画的交響組曲第一番
 ・電送人間

   永野裕之指揮 池野成メモリアルオーケストラ  (2006)

池野の映画音楽に基づくオーケストラ作品である。「妖怪大戦争」は、題名のとおり妖怪同士の闘いであり、攻撃的で強迫的な音圧の、いわゆる池野トーンが炸裂である。「交響組曲第一番」は、「傷だらけの山河」、「白い巨塔」、「赤い水」の音楽から選んで今井重幸が編んだものである。ここでも暴力的な(?)池野トーンが炸裂だが、しみじみとした音楽もある。「電送人間」は、サウンドトラックをそのまま収録なのだが、重々しく不気味な音楽もあれば、軍国キャバレー「大本営」で流れるムード音楽や「軍艦マーチ」のジャズ風編曲もあり面白い。(「電送人間」はDVDを持っているので、あとで久しぶりに観よう(*))

   ―夕食その他で休憩―

●山内正
 ・陽旋法に拠る交響曲
 ・ピアノソナタ
 ・チェロソナタ
 ・青春賦

   上田仁指揮 東京交響楽団 (1961)
   村上弦一郎 (ピアノ)/井上頼豊 (チェロ) (1973)
   堀田康夫指揮 成蹊大学ギターソサエティー (1974)

師伊福部昭の「ゴジラ」に対し、「ガメラ」の映画音楽で知られる山内だが、映画音楽以外の作品はほとんど演奏される機会がないのではないか。それでも、今はこうやってCDが出ている。いい時代だ。交響曲は、古き佳き時代の日本映画を観ているような気がする、どこか懐かしい響きの音楽だ。ピアノソナタやチェロソナタも、西洋の和音とは違う日本和声に基づいていて心に響く。山内の作品は和風味がほどよく効いている感じだ。「青春賦」は若さあふれる青春の謳歌という感じで好ましい。これは山内の、戦争によって奪われた青春時代への憧憬があったかもしれないということである。


今日はここまでにする。(理由:(*))

さて、このシリーズ、いつまで続けるかな。
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