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2019年01月14日20:33

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【音楽】 日本人作曲家の作品を聴く (その2)

今日は特に出かける用事もなかったので、一昨日の続きで、また日本人作曲家のCDを聴きまくった。『音楽放浪記 日本之巻』を読んで、日本人作曲家のCDは結構持っているのに、しばらく聴いていないものも多いことに気付かされ、じっくり聴き直そうと思ったのである。

●黛敏郎
 ・交響詩「立山」

   黛敏郎指揮 東京交響楽団  (1973)

日本人作曲家の作品もきちんと聴こうとCDを買い始めた頃、おそらく最初に買ったのがこれだったと思う。もともと映画用に作られた音楽を交響詩という形にしたもので、「大地」、「祈り」、「道」の3部からなる。雄大な立山の自然、信仰、生活を描き、力強さと美しさと神秘さを、余すところなく表した音楽であり、間違いなく黛の傑作のひとつだ。


●外山雄三
 ・管弦楽のためのディヴェルティメント
●徳山美奈子
 ・交響的素描「石川」
●西村朗
 ・樹海
 ・鳥のヘテロフォニー

   岩城宏之指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢/吉村七重 (二十絃箏)  (2002)

外山の「ディヴェルティメント」は、お得意の日本民謡を素材にした曲で、「ドンパン節」に始まり、聴いたことがある旋律が展開し、最後に一気に昂揚する。徳山の作品は石川県の印象を描いた曲。金沢の女性的な美しさと能登の海の男性的な勇壮さを表しているという。西村の「樹海」は、二十絃箏も加わって、樹海に迷い込んだような(?)独特の雰囲気の曲である。「鳥のヘテロフォニー」はバリ島のガムランやケチャを取り入れた作品で、なかなか面白い曲。


●三善晃
 ・祝典序曲
 ・ヴァイオリン協奏曲
 ・ピアノ協奏曲
 ・チェロ協奏曲第2番「谺つり星」

   沼尻竜典指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
   堀米ゆず子 (ヴァイオリン)/岡田博美 (ピアノ)/向山佳絵子 (チェロ)  (2003)

「祝典序曲」は勢いよく景気のいい曲だが、続く3つの協奏曲ではガラリと雰囲気が変わる。ヴァイオリン協奏曲は、「自分自身に抗いながら自身を捨てきれずにいたが、この不自由な絆こそ確かなものだった」という状況で作曲され、結局は「大して私を変えてくれなかった」そうだ。なんなんだ、それは。ピアノ協奏曲は「明るさ、透明と簡潔、率直に若くあることを表出しようとした」部分が少し感じられるが、「谺つり星」では、結局は「私の中にも谺するものがあるが、他者には聴き取られない」となる。片山氏の書くように、やはり三善音楽のキーワードは「断絶」なのか。


●佐藤聰明
 ・RUIKA
 ・夜へ
 ・ホーマ

   兎束俊之指揮 アンサンブル・エンドレス
   苅田雅治 (チェロ)/佐藤敦子 (ソプラノ)  (1992)

人生の黄昏への哀歌、静謐なる音の海。3曲とも山場もない静かな静かな曲が、弦楽合奏により演奏される。「RUIKA」は死者の魂を悼む歌で、チェロの独奏が加わる。「夜へ」も、全く同じような曲で、前曲と区別がつかない。「ホーマ」はサンスクリット語で「浄かな火」の意であり、「護摩」と音訳される。弦楽合奏に乗せてサンスクリット語のマントラが唱われるが、前2曲と全く変わらないような曲で、これが延々と3曲50分間続くのだ。日中の明るい時に聴くには合わないかもしれないが、夜聴くと安らかに永遠の眠りにつきかねない...


●松村禎三
 ・管弦楽のための前奏曲
 ・ピアノ協奏曲第2番
 ・交響曲第1番

   岩城宏之指揮 東京都交響楽団/野島稔 ピアノ)  (1992)

前奏曲は、鬱蒼とした混沌の音楽である。佐藤聰明から続けて聴くと、黄泉の国に入り込んだような気さえする。対してピアノ協奏曲第2番は動きがある音楽であり、細かいパッセージのピアノがオーケストラと絡み合って、動と静と行き来する。ある種の官能的な響きも感じられる。交響曲第1番は、重々しい前半部分を経て多層な音響が展開する。室内楽的な第2楽章を経て、最後は炸裂する。なお、CDの表記は「交響曲」のみだが、これは第2番が発表される前に録音されたため。やはり松村作品は、「不思議な官能と抒情をないまぜにした音楽」なのか。


●別宮貞雄
 ・歌劇「有間皇子」

   若杉弘指揮新 日本フィルハーモニー交響楽団
   福井敬/大島洋子/永井和子/多田羅迪夫/勝部太/鈴木寛一/経種廉彦
   北村哲朗/志村文彦/小鉄和広/大久保光哉  (2001)

黛敏郎のように「日本語はオペラには合わない」と、「古事記」も「金閣寺」もドイツ語オペラとした作曲家もいるが、別宮は日本語のオペラを残した。福田恒存の台本に基づく3幕オペラである。皇位継承の身に生まれながら、保身のために狂人を装う有間皇子。中大兄皇子の奸計に、こと顕れ、刑されることとなる。日本の歴史上の事件を題材に日本語で歌われるオペラ。日本人にとって、こんなに分かりやすいオペラはない。音楽もなかなか劇的になっており、楽しめる。一度、舞台でも観てみたい。なお、片山氏は「オペラ初演から初めての音盤が出るまで36年もかかったとは、相変わらずこの国はいかれている」と、激しくお怒りのようだ。


●金井喜久子
 ・バレエ音楽「龍神祭り」序曲
 ・琉球カチャーシー
 ・ブラジル・ラプソディ
 ・琉球譚詩曲
 ・アダージョとアレグロ
 ・琉球狂詩曲
 ・交響曲第1番、未発表のフィナーレ(ピアノスケッチ)

   高良仁美 (ピアノ) (2005/2006)

沖縄出身の作曲家のピアノ作品を、沖縄出身のピアニストが弾くという、沖縄の香り満載のCDである。初めて聴いても沖縄だと分かる独特の音階による音楽が心地よく響く。ブラジルな曲もあるが、「民族の本能のままの強烈なリズム」は、どこか通じるところがあるようだ。交響曲第1番の第4楽章になるはずだった曲のスケッチも録音されている。これは師の呉泰次郎の教えでドイツ・ロマン派の様式で書かれたが、金井はそれを好まず、結局完成させなかった。やはり金井は、琉球音楽と西洋クラシック音楽の融合をしたかったのだ。


●林光
 ・原爆小景[完結版]
 ・火の夜
 ・カザルスのために
 ・星めぐりの歌

   林光指揮 東京混声合唱団/寺嶋陸也 (ピアノ)  (2002)

「原爆小景」は、原民喜の詩に基づく無伴奏合唱曲である。1958年に「水ヲ下サイ」が作曲されてから、「永遠のみどり」が2001年に完成されて完結版となるまでに、世紀をまたがる長い年月を要した。この曲の評には「原爆の惨禍を表現するには迫真性を欠いている」というのがあったそうだ。しかし、林は大仰な表現は好まず、少し距離をおきながら含蓄に富んだ作品を作っているのだという。その方がいいかもしれない。「火の夜」は宗左近の詩、「カザルスのために」はカタルーニャ民謡「鳥の歌」の編曲。その「鳥の歌」が、原語で女声合唱、日本語訳で男声合唱、混声合唱の2とおりで、ピアノ伴奏付きで歌われる。「星めぐりの歌」は、もちろん宮沢賢治作の歌の編曲だ。


●芥川也寸志
 ・子供のための交響曲「双子の星」
 ・映画音楽組曲「八つ墓村」
 ・映画音楽組曲「八甲田山」

   本名徹次指揮オーケストラ・ニッポニカ/岡寛惠 (語り)/すみだ少年少女合唱団  (2009)

宮沢賢治つながりで、芥川の「双子の星」を聴く。交響曲とは付いているが、劇音楽といった方がいいだろう。ストーリーの語りに合わせて、音楽が進行していく。もちろん劇中で「星めぐりの歌」も歌われる。宮沢賢治も、後世に残る作品を作った作曲家の一人に数えていいかもしれない。この交響曲「双子の星」があちこちの小学校で演奏されているとしたらよいが、実際はどうだろうか。後半は映画音楽の組曲。やはり「八つ墓村」の「惨劇!32人殺し」が凄まじい。この曲をBGMに作業をすると捗るだろう。 (って、どんな「作業」だ?)


●團伊玖磨
 ・ファンタジア第1番
 ・ファンタジア第2番
 ・ファンタジア第3番
 ・ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
 ・古雅なるファンタジア

   小林武史 (ヴァイオリン)/梅村祐子 (ピアノ)/ヨゼフ・ハーラ (ピアノ)
   小林武史指揮 コレギウム・ムジクス東京  (1988/1990/1998)

團はもともと大作志向があったが、学生時代に小編成の室内楽を作ると、うるさくしつこく直され、いよいよ室内楽を作る気がなくなったという。それが、吹っ切れて作った曲が「ファンタジア」で、このCDの作品は全て小林武史のために作られている。ブリリアントな第1番、「沈潜した美しさをたたえた」第2番、そして、しみじみとしたメロディーから徐々に高揚していく第3番、どれも良い曲だ。ヴァイオリンソナタは、諸井三郎、山田耕筰、橋本國彦の「いいとこどり」をしたような作品らしい。弦楽合奏による「古雅なるファンタジア」も、無調のバッハ(?)という感じで、團の作品のある一面をみせてくれる。


●滝廉太郎
 ・2つのピアノ小品 (メヌエット、憾み)
●箕作秋吉
 ・花に因んだ3つのピアノ曲 (夜の狂詩曲、さくら、春のやよい)
●菅原明朗
 ・水煙
●橋本國彦
 ・3つのピアノ小品 (雨の道、踊り子の稽古帰り、夜曲)
●清瀬保二
 ・琉球舞踊
●金井喜久子
 ・琉球舞踊「月夜の乙女たち」
●早坂文雄
 ・秋
●小山清茂
 ・かごめ変奏曲
●矢代秋雄
 ・夜曲
●中田喜直
 ・変奏的練習曲
●坂本龍一
 ・ピアノ組曲
 ・Just For Me

   小川典子 (ピアノ)  (1996)

今日はこれで最後にする。滝廉太郎から坂本龍一まで、日本人作曲家の珠玉のピアノ小品を集めた録音である。片山氏によれば、「近代日本のピアノ曲には未録音のよいものがまだ厖大にありすぎる」とのことで、これからどんどん演奏され録音されることを望む。なお、このCDは日本人演奏家による日本人作曲家の作品集なのに、スウェーデンのBISから出ている。

今日は朝から晩まで、こんなに聴いた日はないだろうというくらいたっぷり音楽に浸った。まだまだ日本人作曲家のCDはある。「最近購入したCD」は少し休んで(要するに新しいCDは買わないで)、しばらくこのシリーズ(?)を続けていこうと思う。
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