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2019年01月12日21:02

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【音楽】 日本人作曲家の作品を聴く (その1)

今日は、時折冷たい雨の降る、どんよりとした天気だった。こんな日は自宅で音楽でも聴きながら過ごすのがよい。先日の日記で、片山杜秀著「音楽放浪記 日本之巻」を読んだことを書いたが、それを受けて、手持ちのCDを引っ張り出して、日本人作曲家の作品をとことん聴きたくなった。

今日聴いたCDは次のとおりである。

●伊福部昭
 ・舞踊曲「サロメ」

   山田一雄指揮 新星日本交響楽団 (1987)

「サロメ」の音楽といえば、リヒャルト・シュトラウスのオペラがまず浮かぶが、伊福部昭も作曲しているのだ。聴けば伊福部作品とすぐに分かる「伊福部節」全開の音楽で、怪しげな雰囲気が全編を貫く。まだ録音でしか聴いたことがないので、一度生で聴きたい。


●山田耕筰
 ・弦楽四重奏曲第1番
 ・弦楽四重奏曲第2番
 ・弦楽四重奏曲第3番
 ・弦楽四重奏のためのメヌエット
 ・ピアノ五重奏曲「婚姻の響き」
 ・ピアノのための「からたちの花」
 ・哀詩「荒城の月」を主題とする変奏曲
 ・クランフォード日記

   YAMATO弦楽四重奏団/井田久美子 (ピアノ) (1999)

山田耕筰の弦楽四重奏曲は、第2番のみが完全な形で残されているが、他の番号も可能な限り演奏しようという録音である。第1番は第3楽章のヴィオラ・パートの一部が欠落し、自筆でunfinishedと書いてあるそうだ。第3番も第1楽章の前半のみが演奏可能である。古典的弦楽四重奏曲の山田風という感じか。後半に収録されたピアノ曲もよい。滝廉太郎と山田耕筰が結び付いた「荒城の月変奏曲」はなかなか面白い。


●呉泰次郎
 ・七つの前奏曲集
●長與惠美子
 ・琴・笛・をどり
●信時潔
 ・Vivace assai
 ・Variationen
●高田三郎
 ・ピアノのための前奏曲集より 第2曲/第3曲
●柏木俊夫
 ・芭蕉の奥の細道による気まぐれなパラフレーズより
●大中恩
 ・「おなかのへるうた」による変奏曲

   花岡千春 (ピアノ) (2015)

信時潔の系譜に連なる作曲家によるピアノ作品集である。呉の「七つの前奏曲」は珠玉の名曲集。長與の「琴・笛・をどり」は、どこからか琴や笛の音がかすかに聞こえてくるようだ。信時のVariationenは「越天楽」を主題とする22の変奏曲。高田も合唱曲だけの人ではない、素敵なピアノ曲だ。柏木の作品は「奥の細道」の情景が浮かぶ(ような気がする)曲だ。そして、「おなかのへるうた」が、まさかこんな素敵な変奏曲になっているとは!


●西村朗
 ・ヴァイオリン協奏曲第1番「残光」
 ・悲の河I
 ・霧の鏡

   サシコ・ガヴリロフ (ヴァイオリン)/アントニー・ヴィット指揮ポーランド国立放送響 (1998)

この「光」とは決して明るく輝く光ではなく、「残光」の文字のごとく、消えゆくような黄昏の淡い光である。西の空に沈んだ太陽のアフター・グロウ(残光)を見つめると、死者の魂の余熱であるように感じられ、生命の記憶の最後の赤い輝きであるという。まさにそんな曲で、なんとも不思議な感覚になっていく。独奏ヴァイオリンと弦楽による2曲も、だいたいそんな感じだ。

●團伊玖磨
 ・管絃楽組曲「シルクロード」
●芥川也寸志
 ・エローラ交響曲
●黛敏郎
 ・饗宴

   本名徹次指揮 東京シティ・フィルハーモニー管弦楽団 (2006)

「3人の会」の作品が1枚で聴けるCDである。「3人の会は米中ソだ」と書いたのは片山杜秀氏だが、確かに的を射ている。大陸的音楽(?)な團の代表作の一つである「シルクロード」は、やはり良い曲だなと思う。芥川の「エローラ」と黛の「饗宴」は生でも聴いたことがあるが、「エローラ」は、静と動の対比が激しい芥川節で、エローラ石窟院のように、加えていくのではなく引いていく音楽ということだ。「饗宴」も変化に富んだ曲で、ジャズっぽい雰囲気の箇所もある。やはり「3人の会」の作品は素晴らしい。


●権代敦彦
 ・愛の儀式−構造と技法−
●猿谷紀郎
 ・ときじくの香の実
●一柳慧
 ・音に還る

   岩城宏之指揮 オーケストラ・アンサンブル金沢/
   宮田まゆみ (笙)/林英哲 (和太鼓)/赤尾三千子 (能管)/三橋貴風 (尺八) (2002)

和楽器とオーケストラの組み合わせによる3つの作品。「ケンタイはケンタイ(権代は倦怠)」と書いたのは片山杜秀氏だが、権代は「ごんだい」と読む。確かにバーッと盛り上がる曲でもないし、分かりやすい旋律がある訳でもない。いろいろな音が出てくるわりに、なんだか掴み切れないうちに終わってしまうような不思議な感覚の曲だ。猿谷の曲は意外と良い感じで、うまく和風がミックスされた作品といえる。和太鼓が効果的。一柳の曲は、尺八を主役にして、「気」や「間」の感覚を表した音楽ということらしい。

●柴田南雄
 ・交響曲「ゆく河の流れは絶えずして」
 ・北園克衛による三つの詩〜「記号説」、「黒い肖像」、「黒い距離」

   若杉弘指揮 東京都交響楽団/東京混声合唱団/伊藤叔 (ソプラノ) (1989)

タイトルから自明なように、鴨長明の「方丈記」に基づいた交響曲である。最初の2楽章は、まあ普通の曲だが、ここから先が何だか訳が分からなく、いや、様々に展開して面白くなってくる。いろいろな曲の引用あり、ロマン派風あり、現代音楽風ありで、さらにはひたすら「方丈記」を合唱が無伴奏で歌い、最後の方で朗読(というよりシュプレヒコール?)も入る。北園克衛の詩につけた歌曲は12音技法によるもので、独特の雰囲気。

●武満徹
 ・秋庭歌一具

   伶楽舎 (2001)

最後は武満の雅楽作品でしっとりと。演奏は芝祐靖氏率いる伶楽舎であり、千年の伝統を誇る雅楽を現代に受け継ぐものである。曲の雰囲気は武満作品そのものといえるが、雅楽だとしっくりくるようだ。雅楽ならではの響きと広がりを堪能できる雅な音楽である。
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