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2016年08月03日20:19

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

不定期に書いている、最近読んだ本の備忘録。


●「サイクス=ピコ協定 百年の呪縛」 (池内恵著、新潮選書)

 今からちょうど百年前の1916年の英仏間の秘密協定、「サイクス=ピコ協定」。多くの民族が混在している状況を無視して、地図上に無理矢理作った国境線。これまで、この協定が中東の混迷の諸悪の根源であると片付けられがちだったが、実際はそんなに単純ではない。中東の歴史と現実、複雑な国家間の関係を深く知ることによって、今まさに百年前と同じような様相を呈している中東の危機の、本質を捉えようという本である。この手の分野は疎いのだが、この本はなかなか読み応えがあった。


●「日本クラフトビール紀行」 (友清哲著、イースト・プレス)

 酒税法の「規制」が緩和された1994年以降、クラフトビールが各地に登場し、ビールがかくも奥深く多様性に富んでいるということを、日本人もようやく知ることとなった。各地の個性的なクラフトビールを、実際にその土地を訪ねて味わうビール紀行。クラフトビールの元祖ともいえる厚木サンクトガーレンをはじめ、長濱浪漫ビール、岡山の「独歩」、江別のSOCブルーイング、品川懸ビール、津軽路ビール、伊豆の反射炉ビヤなど、それぞれの魅力を語る。以前、各地の地ビールをほぼ毎日飲んでいてはアップしていたが、またいろいろ飲みたくなったぞ。


●「抵抗のモダンガール 作曲家・吉田隆子」 (田中延尚著、岩波書店)

 吉田隆子の作品は、ヴァイオリンソナタ、お百度詣、青年の歌、など、少ししか聴いていないが、その作品には、彼女の人生が投影されている。裕福な家庭に生まれ、幼少の頃から箏を習ったお嬢様で、青春時代はモダンガールと呼ばれた吉田隆子。しかし、その後の人生は波乱に満ちていた。反戦と女性解放を柱に、「芸術性の高い、民衆のための音楽」を目指して、国家とは距離を置き、自らの理想を追い求めた。治安維持法違反容疑で四度も逮捕され、獄中で病気が悪化し、戦後は作曲活動を再開しものの、志し半ばで世を去ったのである。


●「ウルトラQの精神史」 (小野俊太郎著、彩流社)

 あなたの目はあなたの身体を離れて、この不思議な時間の中に入っていくのです...。放映から50年を経てもなお色褪せない特撮SFドラマ。そのあとのウルトラシリーズの礎となった「ウルトラQ」は全28話からなり、様々なエピソードが描かれる。怪獣の出てこない回も多いし、子供向けというよりは、大人向けの雰囲気を持った話もあり、全体としての統一感がないようでありながらも、戦後から高度成長期に移った時代から見た、「アンバランスな世界」を描いている。この本は、そんな「ウルトラQ」の各話に含有される意味を追っていった、なかなか興味深い本である。この本を読んで、久しぶりに全話をDVDで観た。
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