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2016年04月10日20:09

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【音楽】 新交響楽団演奏会@東京芸術劇場

金曜の夜あたりから体調が悪く、昨日は病に臥せっていた(とは大袈裟だが風邪で寝ていた)が、今朝はほぼ回復したので、音楽を聴いて気分を変えることにした。

今日は気になるコンサートが重なっており、こういうことが時々あって困るが、悩んだ末に池袋に新交響楽団の演奏会を聴きに行くことにした。新響は創立60周年記念シリーズを今年4回予定しており、芥川、別宮、三善、伊福部と、日本人作曲家の作品を毎回プログラムに入れている。すでに1月の演奏会には行ったが、大変素晴らしかった。今日はシリーズ2回目である。

今日のプログラムは次のとおりである。

 ・別宮貞雄: 管弦楽のための二つの祈り
 ・G.マーラー: 交響曲第2番「復活」

   指揮:飯守泰次郎、ソプラノ:安井陽子、メゾソプラノ:池田香織、合唱;栗友会合唱団
   会場:東京芸術劇場コンサートホール(14:00開演)


1曲目は別宮貞雄の作品だ。別宮は、プログラムの解説にもあるように、「端正な古典主義的美学感を確立、調性と旋法に依拠した明快な旋律と抒情性を重んじた創作姿勢を貫いた作曲家」であり、それゆえに私も彼の作品は好きである。もともと理論物理学を専攻していたという異例の経歴の作曲家でもある。その外見からも理知的な印象がある。しかし、これまでCDでしか聴いたことがなく、実演で聴ける貴重な機会ということで、楽しみにしていた。

「二つの祈り」もCDでは聴いていた。別宮は、「神の存在もまたその不存在も証明できないなら、そのどちらかを仮定してそれに賭けて生きるのもよい」と、カトリックの洗礼を受け、この「二つの祈り」も、それが反映されているのだろう。「悲しみをもって」と題した1曲目、「雄々しく」と題した2曲目、どちらも演奏の素晴らしさもあって、心の奥まで響くような感じであった。2曲の冒頭の金管によるファンファーレは、演奏の難易度はかなり高いように思えるが、何の破綻もなく、そこは並のアマオケとは違うところだ。演奏の巧拙を心配する必要はなく、音楽そのものに浸れる。この曲が聴きたくて行ったようなものだが、大変素晴らしい演奏を聴くことが出来て良かったと思う。

演奏会が始まって15分ほどだが、もう20分間の休憩に入る。このあと長いマーラーの交響曲が控えているのだ。休憩時間にはCDの販売もロビーで行っており、日本人作曲家の演奏会とあって、Three Shells がCDを売っていたが、並べてあるCDはほとんど持っているという話をしたら、製作中のCDの情報などをいろいろ教えてくれた。発売されたらたぶん買いそうだ。


さて後半はマーラーの「復活」だが、実はマーラーはやや苦手な作曲家である。あまり積極的に聴いているとはいえず、特に第2番「復活」は聴かない方の筆頭格である。長い交響曲を最後まで聴き通せるか不安だし、退屈して寝てしまうぐらいなら、ここで抜けて荻窪に向かえば後半から聴けるかもしれないということまで考えるが、折角来たのだから、このまま「復活」を聴くことにした。もちろん実演で聴くのは初めてだ。

合唱団も加わったステージは圧巻だ。演奏が始まり、冒頭の力強い雰囲気に良い感触をつかむ。なぜだろうか、退屈すると思っていたこの曲が、全く退屈しないどころか最初の楽章が終わる頃には完全に捉えられていた。第3楽章の前に歌手2人が加わり、諧謔的な第3楽章のあとに、メゾソプラノによる「原光」の独唱で第4楽章に入る。素晴らしい声に聴き入ってしまう。マーラー好きな人には常識なのだろうが、ホルンやトランペット奏者が出たり入ったりする。ホルンやトランペットはステージ外からも奏でられるし、同じくステージ外に打楽器があって、そこからも音が聞こえる。CDの解説を読めば、確かに舞台裏にも奏者がいることは書いてあるが、そんなことすら今さら認識したような体たらくであった。

厳かな合唱も加わって、徐々にクライマックスを迎え、気が付けば1時間半近くに及ぶ演奏を、全く退屈することなく聴けた。それどころか、演奏が終わった瞬間に、感動のあまり涙腺が緩んでしまった。苦手な作曲家の退屈な曲だったはずなのに、まさかの感動である。今まで「復活」の何を聴いていたのだろう。心に直接響くような、あまりに素晴らしい演奏を聴いたためだろうか。自宅でCDを適当に流して聴いているのとは違い、目前で奏でられる素晴らしい演奏が、まさに感動を生んだようだ。


今日はこの演奏会に行ってよかった。実に素晴らしい演奏会であった。

いまだに、プロ=上手、アマ=下手と思っている人もいるかもしれないが、そんなことはないのである。むしろアマチュアは、商売抜きで自分たちの理想を追求できるので、時に聴く者に大きな感動を与える演奏をするのである。私が聴きに行くアマオケはそういうオーケストラである。(アマオケなら何でも良いと言っている訳ではない。)

次回は三善晃がプログラムに入っているが、この日は個人的に優先順位が高い別の演奏会と重なっており、次回は行けないのが残念だ。
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