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2016年04月03日21:30

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【音楽】 オーケストラ・ナデージダ演奏会@杉並公会堂

今日は、オーケストラ・ナデージダの演奏会を聴きに行った。ナデージダはロシアや北欧の音楽、それも日本では滅多に演奏されないのに実は素敵な曲だという作品を積極的に取り上げるアマオケである。余程のことがない限り、ほぼ必ず聴きに行くアマオケの一つだ。

今日のプログラムは次のとおりである。

 ・ドゥナエフスキー:映画音楽「グラント船長のこどもたち」より序曲
 ・ボロディン:中央アジアの草原にて
 ・イッポリトフ=イヴァノフ:アルメニアの旋律による狂詩曲
 ・チャイコフスキー:ノクターン
 ・バラキレフ:3つのロシア民謡による序曲
 ・ボルトキエヴィチ:交響曲第2番

    指揮:渡辺新
    会場:杉並公会堂大ホール (14:00開演)

ロシア音楽好きにはたまらないプログラムであるが、実は前半の5曲の小品集の中で聴いたことがあるのはボロディンの「中央アジアの草原にて」とチャイコフスキーの「ノクターン」のみで、チャイコフスキーもチェロ独奏と管弦楽という形で聴くのはおそらく初めてだ。初めて聴く曲を楽しめるのも、今日の演奏会の魅力である。

最初のドゥナエフスキーは、作曲家の名前すら初めて聞く。この曲は映画音楽だというが、演奏が始まるや、全身で音楽を感じ取れるような素晴らしい音楽で、最初からあまりに楽し過ぎる。SF映画っぽい雰囲気だなと思っていたら、あとでプログラムの解説を見てみると、まさにSFの始祖といわれる、ジュール・ヴェルヌの同名の冒険小説に基づく映画だという。ロシア人にとっては懐かしい音楽で、指揮者の渡辺さんの話によれば、この曲をプログラムに取り上げることが決まった時、オケのロシア人団員の喜びようといったらなかったという。強引にたとえるなら、日本における伊福部さんのような存在かもしれない。1曲目から楽し過ぎる。

続いてはがらりと雰囲気が変わり、ボロディンの名曲、「中央アジアの草原にて」だ。本業は化学者で、作曲はあくまでも余技だった「日曜作曲家」のボロディン。しかし、なんで彼の作品はこうも美しい音楽ばかりなのだろう。中央アジアの草原も、何度聴いても素晴らしい曲だが、生で聴くと、改めてこの曲の良さがよく分かるような気がする。単なる長閑な草原の風景描写ではなく、じっくりと聴かせてくれる素晴らしい音楽であることを再認識した。

続いて3曲目は、イッポリトフ=イヴァノフの作品だが、この曲は初めて聴く。というよりイッポリトフ=イヴァノフの作品はほとんど知らないことを、今さらながら認識した次第だが、この作品がこれまた楽しい。ヴァイオリン独奏(演奏はもちろん、ナデージダのリーダーの相原千興さん)が奏でる、アルメニアの旋律のオリエンタルな雰囲気が楽しい。アルメニアはヨーロッパやロシアの中心であるモスクワからみれば「辺境」の地で、それゆえ音楽もアジア人の感性にも通じるものがあると感じているが、イッポリトフ=イヴァノフのこの作品もまさにそんな感じで、それを相原さんのソロとオケで、見事に奏でられていた。

4曲目は、今日のプログラムに登場する作曲家では一番メジャーなチャイコフスキーだが、取り上げる曲はマイナー作品だ。もともとはピアノ用の曲で、チェロとピアノや、今回のチェロと管弦楽などに編曲され、チェロ弾きには馴染みの作品ということである。チェロ独奏は、ナデージダのチェロ奏者の大島純さん。チャイコフスキーらしい哀愁漂うメロディーを、大島さんのソロとオケで、しみじみと味わうことが出来た。

前半の最後はバラキレフの作品だ。これも初めて聴く曲だが、そんな感じがしなかったのは、耳になじんだロシア民謡を題材にしているからであろう。3つのロシア民謡とは、「白樺はなぜ頭を垂れなかったか」、「白樺は野に立てり」、「ピーテル街道に沿って」である。2つ目はチャイコフスキーの交響曲第4番の終楽章のあのメロディー、3つ目はストラヴィンスキーのペトリューシュカに登場するあのメロディーである。まさにロシア音楽をこれでもかと楽しめる曲である。

前半だけでもあまりに楽しすぎるが、後半の本日のメインプログラムも楽しみだ。

ボルトキエヴィチの交響曲第2番は、今日が日本初演である。第二次大戦の混乱の中で、楽譜のほとんどが紛失したボルトキエヴィチの作品。交響曲第2番は、1938年のボルトキエヴィチ自身の指揮で演奏されたらしいとの記録があり、これが初演といえるが、その後は永遠に失われてしまったと思われていたところ、21世紀になって楽譜が見つかり、故国ウクライナのキエフと、イギリスのグラスゴーで演奏されている。後者はCDにもなっており、私もこのCDで第1番とともに聴いていた。第1番はチャイコフスキーの模倣かパロディーかというほど、ほとんどチャイコフスキーな曲だが、第2番になって、チャイコフスキー的雰囲気も残しながらも、独自の作風に仕上がっていると思っていた。その第2番を生で聴けるのである。

指揮者の渡辺さんの話によれば、キエフでの演奏やCDになっているグラスゴーでの演奏は、発見された楽譜に鉛筆で加えられた書込みに基づいて演奏されているという。今回ナデージダで演奏するにあたり、その楽譜を検証して、本来の形での演奏にしたという。第4楽章に差異があるという。そういう意味で、もしかしたら今日が本当の初演かもしれない。

冒頭がややシベリウス的に始まり、やはりチャイコフスキー的雰囲気になりながらも、雄大な雰囲気を湛えた素晴らしい音楽が展開する。埋もれていたのが勿体ない作品で、このような曲をメインプログラムに取り上げて、しかも素晴らしい演奏で聴かせてくれたナデージダには頭が下がる。第4楽章におけるCDとの微妙な差異は聴いていても分からなかったが、なんとなく新鮮な感じに聞こえた部分はあったような気がする。

終演後は、会場で会ったマイミクのこめへんさん他1名の知人と、ホール内の喫茶室でお茶してから帰った。

今日は、ここ数回のナデージダの演奏会の中でも特に素晴らしい演奏会であったと思う。このような素晴らしいオケなのに、タダ同然で聴けるとは申し訳ない。海外の有名オケに高額なお金を払って有名曲を聴くのもたまにはいいが、こういうアマオケこそ何度でも通って聴きたいものである。
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