【音楽】　伊福部昭の自画像

「キリがないので、伊福部昭のＣＤの購入は少し控える」と書いてから何枚買ったか分からないが（笑）、今回買ったのはＣＤではなくＤＶＤである。しかし、どうしてこう次から次へと、欲しくなるようなものが発売されるのだろう。早速購入して観た。

「伊福部昭の自画像」と題するＤＶＤで、1991年12月13日に府中の森芸術劇場で行われた「伊福部昭喜寿記念コンサート」の映像を中心に構成されたものである。

収録されている曲目は次のとおりである。

・シンフォニア・タプカーラ
・伊福部昭のモチーフによる讃〜ゴジラの主題によるバラード　(芥川也寸志作曲)
・交響ファンタジー「ゴジラＶＳキングギドラ」
・日本の太鼓<ジャコモコ・ジャンコ>
・伊福部昭のモチーフによる讃〜Hommage a A.I.　(黛敏郎作曲)

演奏会の映像の他に、伊福部昭の自宅でのインタビューが冒頭と曲間に入れられている。音楽だけを楽しみたい人には少しくどいかもしれないが、これはこれで貴重な映像だろう。語られている内容は、伊福部ファンにとっては目新しい話題ではないが。

演奏は新星日本交響楽団、指揮は一部を除き石井眞木である。

このDVDの見どころはやはり、伊福部昭自身が指揮をする「ジャコモコ・ジャンコ」だろう。もちろん指揮は本業ではないが、指揮棒を持った瞬間、眼光鋭く指揮者の顔になっている。この曲で太鼓をたたいている奏者がまた豪華だ。原田甫、石井眞木、眞鍋理一郎、今井重幸、松村禎三、三木稔、池野成、黛敏郎、永冨正之の９人で、伊福部昭の弟子たちが、慣れない太鼓演奏に必死なのが楽しい。（ゲネプロでは、ある人（誰だろう？）が撥を落としたり飛ばしたりしたそうで、「撥が顔の前に飛んできた。太鼓は素人の人たちだから演奏も命がけだ」（石井眞木）と、微笑ましい（？）話も。）

残念なのは、「ゴジラVSキングギドラ」を全曲映さず、７曲中２曲目「ディノザウルス」と５曲目「キングギドラ」のところにインタビューが入っていること。（他の曲はちゃんと全曲映している。）　まあ、演奏会の記録というよりは、演奏会を中心にしたドキュメント映像という位置付けだから仕方ないか。

最後の「Hommage a A.I.」は、黛の指揮で、他の弟子たちは合唱（？）で参加している。

この演奏会を生で聴いた人は幸せだったろうなと思う。
伊福部昭ファンにはお勧めのＤＶＤである。