■あるがまま
●「薔薇ノ木ニ
薔薇ノ花サク。
ナニゴトノ不思議ナケレド。」
(北原白秋「薔薇二曲」)
「不思議」という言葉は、もとは「不可思議」という言葉で、
「思議できない」つまり、わたしたち凡夫の知恵では仏の悟りの
内容を思い知ることができないという仏教用語からきている
そうだ。
(増原良彦「日本の名句・名言」講談社現代新書)
●「ひろ・さちや」のペンネームをもつ増原良彦さんは、北原白秋の
「薔薇二曲」のこの詩をとりあげ、詩は、薔薇の木に薔薇の花の
咲くのはごく当然のことで、だから字面では「ナニゴトノ
不思議ナケレド」と言っているが、実は薔薇の木に薔薇の花が
咲くということ自体が「不思議」であり、その神秘・不思議を
この詩は歌っている、と述べている。
●昨日、「いままでに蓄積された、いろんなことを下敷きにして
私たちはものを見ている」と私は書いた。
しかし、めったにないけれど、
私たちの目や心に、何の仲介物も通さず、ものが直接、私たちに
とびこんでくることがある。
それは、はっと気づかされる瞬間でもある。
不純物を混じえずとびこんでくる光は、あるがままの不思議に
わが思いを至らせる。
鏡のように心が澄む。ものがそのまま心に映る。
恋をしたとき、小鳥のさえずりでさえ、二人を祝福しているように
聞こえる。
七十歳になった良寛は、弟子・貞信尼との相聞歌で、こう歌っている。
とびはとび すずめはすずめ さぎはさぎ
からすとからす 何があやしき
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