最近読んだ本の備忘録(というよりただの個人的メモ)。
●「最後の秘境 東京藝大」 (二宮教人著、新潮社)
日本の芸術系大学の最高峰といわれる東京藝術大学。「天才たちのカオスな日常」との副題のとおり、そんな東京藝大生たちの日常を取材して書いた本である。「音校」と「美校」では、同じ大学とは思えないほど何から何まで違っているし、専攻によっても学生たちの有りようは様々であるが、何かを作りたい、何かを表現したいという思いは共通している。卒業後に実際にアーチストとして食べていけるのはほんのひとにぎり、いや、ひとつまみだというが、藝大でしか出来ないことはたくさんあるのである。読んで面白い本であった。(この本、かなり売れているらしい)
●「不機嫌な姫とブルックナー団」 (高原英理著、講談社)
図書館の非正規職員の代々木ゆたきは、ブルックナー第5番の演奏会の会場で、「ブルックナー団」と名乗るオタク3人組に声を掛けられる。ブルックナーが好きな女子ということで、最初はゆたきを珍奇な目で見る「ブルオタ」3人。ゆたきはこの3人とは一線を画すつもりだったが、このうちの一人のタケがネット上に公開している未完の小説「ブルックナー伝」を読むうちに、いつしか引き込まれていく。「元祖非モテ」の変人ブルックナーの生涯に、自分たちの不遇を重ねる3人組とつきあううちに、ゆたきの中で何かが変わっていく。ブルックナー好きなら間違いなく楽しめる、面白い小説である。
●「きょうもまた好奇心散歩」 (池内紀著、新講社)
都内およびその周辺の「ふらりと散歩」の本である。特別のスポットでも名所でもない、何ということもない所だが、池内さんはそんな場所でこそ、眼と脳をフル回転させて、面白いもの、気になるものを見つけるのである。この本に登場する場所は、私も行ったことがあるところばかりだが、まだまだ修行が足りないなと思ってしまう。東京都内にも未知の魅力的な場所がたくさんあることを思い知らされる本だ。
●「科学の落とし穴」 (池内了著、晶文社)
偶然にも池内兄弟の本が続いた。宇宙物学者の池内了氏の科学時評集で、「中日新聞」や「グラフィケーション」などに連載した文章をまとめたものである。地球温暖化、地震予知、宇宙開発の話から、ニセ科学の流行や、理科教育についてなど、鋭い視点で、時に辛口に書きつつ、科学のあるべき姿を綴っている。自分も理科系出身で技術者の端くれであるが、言いたいことを言ってくれていると思うと同時に、自身にもグサリとくるような内容も多い。
ログインしてコメントを確認・投稿する