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2016年11月29日14:32

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「舟形の体育館」と丹下健三

 香川県には、丹下健三がデザインした公共建築がいくつかある。彼の代表作のひとつが、香川県庁で、現在は東館として利用されている。これは五重塔のような、日本古来の木造建築的構造を鉄筋コンクリートで組み立てられている(1958年竣工)。非常に重厚なイメージがある一方で、一階や二階付近は吹き抜けみたいになっていて、内部は意外と解放感もある。


 その後、1964年には同じく丹下健三らの設計で、香川県立体育館が完成している。和舟を模したユニークな外観で、弓反りになっていて、中央が競技スペースで舟の両端(舳先)に当たる部分が観客席という構造だ。私たちは、その姿から「舟形の体育館」と呼んでいた。

 私も、子どもの頃に少年剣道大会で何度かここを利用した。他の一般的体育館と違って、やはりゴツかったのだけれど、それ以上に利便性が犠牲になっているように感じた。中央の競技スペースは必ずしも広いとはいえず、観客席もそれほどゆったりしていない。第一、換気があまりできないような感じで、体育館内に熱がこもりやすく、暑かった。

 もちろん、建築物としては価値のあるものには違いない。何といってもあの丹下健三が初期に手掛けた傑作たちである。

 ただ、築半世紀が経つなかで、保存や補修の課題は大きくなってきている。香川県庁は、新庁舎(2000年竣工)も丹下の設計で建てられた。東京都庁舎っぽいのは、設計者が同じだからでもある。旧本館も、上述したように東館としていまでも使われている。

 しかし、舟形の体育館は、保存と耐震性の問題から、2014年に閉鎖された。その背景に、使い勝手の悪さもあったとは思う。


 その後継となる新県立体育館建築計画が、高松築港再開発地区(サンポート)に決まったと地元紙が伝えている。海寄りの空き地で、現在は公園として利用されている場所だ。

 一時は、公共施設を積極的に郊外へ移築する傾向がみられていたけれど、近年は逆に中心部に集中させているようにも感じる。もちろん、大規模な体育館やホールは、利便性のいいところのほうが利用もしやすいだろうから、その意図がおかしいとは思わない。

 他方で閉鎖されたままの旧県立体育館は、一部で保存運動も広がっている。確かに、ユニークさでいえば、遺してもいいような姿なのだけれど、保存にも、また大地震などに耐えられる構造にするにもお金がかかるわけで、近代建築、それも時代をリードした建築家たちの手によるこうした構造物をどうしていくかについて、自治体もますます難しい選択を迫られるに違いない。
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