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2014年12月06日15:00

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詩『鬼ごっこー2014』


虎落笛かさなり
空は漠として雲を東に流す

視界を遠のいていく人間どもの背中が
鬼の脳髄を突き刺してさそう

ひとつ、ふたつ、みつ、
 焦り
よつ、いつつ、むつ、
 不安
やつ、ななつ、ここのつ、
 悦び
とう。

両のまなこは冷ややかに開き
解き放たれた本能が片頬を膨らませる
体はゆっくりと前にかたむき
飛び出す足は力強く
しだいに速さを増す

耳に寒風を切り裂く音
逃げまどう足音と歓声
鬼の手が触れるたび
あきらめに喘ぐ息
次々に小さくなる影

――全てを食らはむ

ひとつ残った背中は真正面に向き
狂気の中にうねっている
のばした赤い手が執拗にせまる
力尽きた肩に鬼の手がかかった
青く失速していく
崩れおちる狂気

白い吐息は合わさって靄になり
落ちた枯葉は風にさらわれ
過ぎていく季節に
消えていく


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