「相変わらず迷走してるなぁ」ってのが第一印象。
『
ブラック・レター・デイズ』と同時に発表された本作は、似非ホワイト・アルバム状態だったそれと比べ、比較的スタンダードなロック・ミュージックで纏められている。サーフっぽい感覚も戻ってきてる。ちょっとだけ、そう、“ちょっとだけ”(これは特に強調しないといけない)ピクシーズ時代を彷佛させるレコードだ。
ただし残念ながら、楽曲が持つエッジはピクシーズ時代から天と地ほど離れているので(今さら言うことでもないけど)、シンプルに徹したことであらためて存在感の無さが浮き彫りになる残酷な作品になってしまった。
ピクシーズのBサイドに収録されたインストの“Velvety”にボーカルを付けてリメイクしていたり、しかもそれがオープニング・ナンバーで本作のハイライトだったりするのがまた泣ける。過去の遺産にすがり過ぎ。
だが、よくよく聴いていると曲自体は悪くないのだ。『
ドッグ・イン・ザ・サンド』で培ったトラディショナルなソングライティングも地味に活きてるし。しかし脇を固めるバンドが凡庸なのと、アレンジの煮詰め方が足りないせいで、かなりデブの個性が薄まってしまっている。僕はあの単調で工夫の無い8ビートを聴いてると、つまらなさを通り越して腹が立ってくるのだ。
悪いアルバムではない。むしろ良質なロック・ミュージックの部類に入るかもしれない。
しかし俺がデブに期待してるのはこういうのじゃない。
これだけありとあらゆる種類のロックが溢れている世の中で、このレベルの作品は山ほど存在するわけで、貴重な時間を割いてわざわざデブの作品を手に取るからには別のアングルが欲しい。もはやデブを聴く必然性を感じられなくなってしまった。
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