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2009年09月30日20:47

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NHK音楽祭2009 レクイエム/ヴェルディ

NHK音楽祭2009のトップを飾るミラノ・スカラ座による「レクイエム」(ヴェルディ作曲)が、9/10、NHKホールで演奏された。
生を聴きには行けなかったが、ありがたい事に、こんなに早く録画が放映された。9/28に開けてすぐ、BS2、深夜1:00〜のクラシック・ロイヤルシートである。
ミラノ・スカラ座は、9月、日本公演(演目は『アイーダ』『ドン・カルロ』、共にヴェルディ)の為に日本に来ており、そのメンバーがこの音楽祭にジョイントした恰好。

my mixiには、このスカラ座公演と”ヴェルレク”の為に、9月上中旬ずっと大阪から上京して”滞在”している方もおられる。スカラ座公演の為というより、正確には、バスのルネ・パーペが目的との事だが。
当然、彼女は自身の日記でオペラとこの「レクイエム」について書いておられる。
放送も録画して繰り返し聴いている由。
私も録画したものの、しばらく聴けずにいたが、彼女の熱気に煽られて、今日やっと聴けた。

始まって、おやこのメゾは?と思った。
私は、’06年の4月に、”東京のオペラの森”の企画により、この曲を上野の文化会館で聴いている。
指揮はリッカルド・ムーティだった。
今回は、スカラ座を率いるダニエル・バレンボイムが当然指揮棒を振るが、ソリストで頭にあったのは、my mixiのお陰で、バスのパーペと、ソプラノのバルバラ・フリットリの2人である。
何故フリットリが頭に入っていたかというと、実は3年前のソプラノもフリットリだったからだ。

正直に言うと、3年前の公演でのフリットリはあまり記憶に残っていない。型通りで、迫るものがなかったからだ。だが、隣の若手のメゾソプラノが良かったのを憶えている。
参→http://mixi.jp/view_diary.pl?id=114494477&owner_id=3341406

録画を見始めて、あれ、このメゾは彼女じゃないのか?と思い、終えてから調べたら、そう、その通りだった。エカテリーナ・グバノワである。
音楽祭のサイトを見ると、当初予定されていたルチアナ・ディンティーノが喉を痛めた為、代役に立ったのがグバノワだというのだ。
という事は、女声は3年前と全く同じ組み合わせになったという事。偶然が重なったものだ。

今回の演奏でも、グバノワは良かった。
このレクイエムはメゾのウェィトが大変高い。メゾが各章の導き手のような役割をする。したがって、メゾが崩れてしまうと、ヴェルレクは成り立たないのだ。
反面ソプラノは、どちらかと言うと、そのメゾに絡ませる装飾的な位置付けだったり対旋律だったりする場が多いような気がする。
だからどうしてもまずメゾに目が行く。ソプラノはその次、といった感じで聴いている。
声質も、フリットリのそれは、巧妙に何本か抜かれてデジタル処理されたような声で、好みではない。外見はちゃんとしているが中は骨阻鬆症みたいな声、と言ったら、ファンはさぞ怒るだろう。

それが、最後の”リベラメ(我を解き放ち給え)”辺りから、ソプラノが、つまりフリットリが変わってきた。
何かものが憑いたような、乗り移ったかのような凄味が顕れてきて、私も急に惹き込まれた。
鬼気迫るものに圧倒され、my mixiへのコメントにも書いたが、譬えは悪いけれども、能の『葵上』で、小面系の「泥眼」がある場面で急に「般若」に変化したかのような、そんな感じがしたのだ。

この章は、元々、ヴェルディが当レクイエムの為に作曲したものではない。
5年前、ロッシーニが死んだ時、ヴェルディは共作で「ロッシーニの為のレクイエム」を作る事をかなりの人数の作曲家に提案したが、結局それはまとまらなかった。しかし、ヴェルディ本人は、受け持つ部分を人に先んじて作曲していた。それを、ヴェルディはこの”リベラメ”の部分に生かしたという訳なのだ。

ヴェルレクの最終の形は、大元のこの”リベラメ”の各モチーフをあちこちに移植、変形させ、壮麗壮大に膨らませたものと言ってもいいかもしれない。
逆に言えば、この”リベラメ”には全てが凝縮されて詰まっている。”怒りの日”のダイナミックなオーケストレーションもあれば、対位法を駆使した合唱もある。大変密度が高く、構造がしっかりしていて、まるで1幕の劇的オペラを見るようだ。
そしてソロはソプラノのみ。フリットリは、この1幕オペラの主人公になり切る事ができたのだろう。
オーケストラと合唱が複雑な絡み合いを見せ、錯綜したその塊の中からソプラノが抜け出して頂点を形作る部分には、人間的な(敢えて天上的なとは言わない)生々しい苦悩と悲しみが結晶しているようで、惹き込まれ、涙が出た。
もう一度能に譬えるなら、ここで、フリットリの”面に魂が入った”という事かもしれない。
不思議な事に、声の質迄前半とは打って変わり、中身のみごとに詰まった歌唱で次第にデクレッシェンドし、”歌劇「レクイエム」”はピアニッシモの中、静かに幕を閉じた。


指揮 ダニエル・バレンボイム
演奏 ミラノ・スカラ座管弦楽団
ソロ
バルバラ・フリットリ(s)
エカテリーナ・グバノワ(ms)
ヨハン・ボータ(t)
ルネ・パーペ(b)
2009.09.10公演の生収録


ps.
ナオさん、パーペについて触れませんでした。すみません。
 

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