●寄り道ついで (29)/■兄妹

■ブラウス

　・さっきまで、またコタツで寝ていた。
　　晩飯の後、最近はきまって１２時ごろまで寝ている。
　　妻は、よくサスペンス物を観る。
　　私もクッションを折り曲げ枕にして、妻の横で
　　お相伴してＴＶを観る。そのうち眠る。


　・アキラがきょう休みだったので、妻の帰ってくる時間を
　　見計らって、娘一家が車でやってきた。

　　チカが神戸市の音楽会に出場するので、そのとき着る白い
　　ブラウスがないから、どうしょう。
　　娘からの電話が一週間くらい前にあり、妻が二枚買い、それを
　　今晩とりに来たのだ。


　・チカは去年の二学期頃から、急に「女の子」らしくなってきた。
　　ぽっちゃりとしてきて、背も伸びた。中学一年の兄のショウを
　　追い越しそうな勢いだ。
　　きょう見ると、ショウに顔も似てきた。チカは小学五年だが
　　この時期、男の子と比べると、女の子の成長はずっと早い。
　　夏、テニスの練習で焼けていた頬の色も白くなっていた。

　　「チカ、きょうはなんでか顔がお兄ちゃん、そっくりやナー」
　　と言うと、

　　「なんでやネン、アイツとは似てない！」

　　チカは、私に抗議する。チカは内心、兄貴より自分のほうが
　　すぐれていると思っている風がある。


　・買い込んでおいた食料やお菓子、共同購入でとっている野菜
　　ジュースなどをめいめい持って、車に運ぶ。
　　アキラがブスっとして玄関口に立っている。

　　「どうしたのアキラちゃん、眠たいの？」と妻がからかう。
　　「コイツ、全然言うこときかへん！」といって末っ子のアツシを睨む。

　　小学一年のアツシがアキラを横目で見ながら、シクシクと泣く。
　　
　　「アッちゃん、お父さんの言うこと聞かないとね」
　　妻がアツシをなだめる。



　・娘一家は車に乗り込み、きょうの収穫をひざに乗せて
　　「ありがとう」と一斉に礼を言うと、足早に帰っていった。

　　いつもの光景である。


　　娘は三人の孫と、もう一人一番手のかかる大きなコドモ、
　　アキラを連れて、ときどき妻が用意した「買いだめ品」を
　　とりにやってくる。

　　孫たちは少しずつ大きくなっている。
　　甘えん坊のアツシも家ではメソメソするが、外では腕白だ。

　　アツシは年末、とうとう髪を切らなかったようで、きょう見ると
　　ボサボサに伸びていた。今度の木曜日あたり、散髪に連れて行こう。


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