●寄り道ついで (16)/■女房にも電話

■小学時代・高校時代

　・女房と私は、同じ高校の卒業生である。
　　卒業年度も同じ、クラブも同じ。
　　１年生のときのクラスも同じだった。

　　いろんな中学から、その高校には生徒が集まってきていた。
　　全県一区みたいな感じで、延岡あたりからも、住所を
　　宮崎に移してやってきていた。


　・ところで、私は小学校４年の夏に宮崎に来た。宮崎市の中心部の
　　小学校で、学校の正門前は宮崎県警、裏門前は県立図書館、
　　斜めには県庁があった。

　　不思議なことに、いろんな学区から集まってくる高校なのに
　　私には、この小学校の４年から、高校卒業までずっといっしょで、
　　クラスも同じという知人、友人が多い。


　・先日、そんな友人の一人、Ｍから、電話があった。
　　関西在住の同一卒業年次の高校同窓会をやろう、というものだった。

　　これまでも、何回か、その集まりをやった。しかし、ここ５年くらい
　　やっていない。

　　「還暦を迎えたこともあるし、新年会をやろう！」という
　　ことだった。
　　日時は、１月１４日の土曜日、夕方６時で、とりあえず
　　大阪・新阪急ホテルのロビーで落ち合おう、ということに
　　なった。


　・私は、この日は仕事なので、参加しても７時以降になるナーと
　　返事しておいた。

　　すると、その晩、今度は小学４年からづっと一緒だったＫさん
　　から電話が来た。

　　「奥さんも来るんでしょ？　是非、同伴で来てよネ」

　　「さぁ、女房の方は正月は一日だけが休みで、あと年末年始、
　　　仕事だったから、ゆっくりしたいと言ってたけど・・」
　　「そして、彼女１４日は、出勤だし・・・」

　　出勤したら、帰りは早くても夜９時になる。

　　Ｋさんは、自分のほか、女性では誰それが来るし、女房とは
　　小学校からの幼馴染のＹさんも来るので、なにがなんでも、
　　出勤のスケジュールを変更して、参加するように、との
　　要請だった。


　・きょう、仕事から帰宅した女房に聞いた。

　　「１４日、どうする？」
　　「わたし？、わたしは出ぇへんよ、仕事があるし」


　・「Ｋが、Ｙさんも来るから、いっしょにどうぞ、と言ってたけど」
　　「ダメ、ダメ。しんどいがナー」

　　私は、Ｋさんから、是非とも奥さんを連れてくるように、あの日、
　　あとから電話のあったことを女房に言った。


　・最初に電話があったＭによれば、そもそも今回の集まりの
　　提案者はＫさんらしい。ＫさんがＭに電話して、Ｍを幹事役に
　　仕立てて、みんなを集めているようだった。

　　Ｋさんは、家が公認会計士をしていて、頭がよくて美人だった。

　　宮崎市内でも、当時は公認会計士事務所は少なく、それが
　　どんな仕事かは誰も知らなかったが、お金持ちで、彼女は
　　そこのお嬢さんであり、　私たちは彼女のことを「ぶげんしゃ」と
　　呼んでいた。「分限者」という漢字でその意味を知ったのは、
　　ずっとあとのことである。


　・それで彼女は、小学校でも先生に可愛がられており、私たち男友達は、
　　先生がＫさんを他のものより何かと可愛がるので、それに腹を立てて、
　　彼女の家の屋根に石を投げたことがある。

　　また、私自身は覚えていないが、前に会ったときに
　　Ｋさんは、「石場さんはホームルームのとき、先生はＫさんを
　　『えこひいき』しています、って言ったのよネー」と言った。


　・そんなことを女房に話していたら、女房が、

　　「まぁ、気があったってことネ」
　　「なんもなかったら、石なんか投げないって」

　　と言った。




　・女房とは高校１年、十五の春に知り合い、以来、４５年
　　つきあってきた。
　　Ｋさんとは、小学４年から高校卒業までと、彼女が結婚して
　　西宮に引っ越してきてから同窓会で、ときどき会った。

　　だから当然、女房と一緒に過ごしてきた時間が圧倒的に多いのだが
　　女房の小学時代に私はいない。中学時代にも私はいない。

　　女房との時間は高校時代から始まり、今日に至っている。



　・そんなことを考えていたら、女房に電話がかかってきた。
　　女房の小学時代からの知り合いのＹさんからだ。

　　「えーえ、そんなことなら、ぜひぜひ参加しましょ」
　　「会うの楽しみだワー」

　　と、ころっと意向が変わって、女房は電話を切ってから

　　「まぁ、替わりに誰か出てもらって
　　　１４日、休んでもどうにかなるナー」

　　と、出勤スケジュールのことを、独り言を言いながら
　　考えている。
　　
　　どうやら、女房も参加することに決めたようだった。


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