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2005年10月02日01:22

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●日々雑感(17)

■こわい夢

 夢の中で、うめき声が聞こえる。
 夢を見ながら、私は見ている夢を忘れ
 そのうめき声のほうに注意を集中する。
 すこしずつ夢がさめ、うめき声がはっきり
 聞こえるようになる。
 たしかに、うめき声。
 夢ではない。
 私はガバと、飛び起きる。
 隣の部屋からのうめき声。

 テレビが消された居間から聞こえるうめき声、
 聞き覚えのあるうめき声。
 腹のそこから、喉元をしぼり出すように、
 低く震えながら、うめいている。
 
 「アァッ、ア〜アッ、ウ〜ゥ、ウ〜」
 「ウッゥ、ウ〜、アッ〜、ウ〜、アァ、アァ、」
 
 きょうは、それほど怖くない。
 書き写してみたが、ちっとも怖くない。
 でも、これが闇の中から聞こえてきて、
 だんだん近くなり、やがて耳元で聞こえてくるのが
 わかるのは、
 いまでも怖い。

 妻がどんな夢を見ているのか知らない。
 でも、たまにこうやってうなされる。
 びっくりして、飛び起きて、となりに寝ている妻を
 揺り動かして目を覚まさせるが、
 長引かないときは、そのまま寝かしておく。

 きょうは、座布団を三枚ならべたうえで、
 妻は眠っている。
 うめき声は少しずつ音量を落とし、
 顔は、ほかの夢に移っているのか、
 穏やかさをとりもどし
 寝息もゆっくりしてくる。

 妻は、こわい夢を見たのだ。
 私は、もう彼女のようにうなされる
 こわい夢は見ない。

 しかし、
 彼女はまだ原始の恐怖を温存していて
 いまゆっくりと眠っている。

 海底火山のマグマだまりが充満し、闇夜に突然
 噴火するように、
 妻のうめき声は、私の夢の中に割り込み、
 私にも太古の恐怖を呼び起こす。 


■次号(日々雑感18)を読む
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