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2024年03月26日22:58

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福田平八郎展/中之島美術館

順序が逆になったが、3/22(金)の大阪行では、四天王寺に行く前に中之島美術館に寄り福田平八郎展を観た。
「没後50年」を掲げた大規模な回顧展である。
総展示は、前後期合わせ、本画だけで約120件、素描・下絵約40件、他に写生帖も多数。
代表作である《漣》(1932/中之島美術館蔵/重要文化財),《竹》(1942/京都国立近代美術館),《雨》(1953/東京国立近代美術館)も来ている。
・会期 3/9〜5/6

福田平八郎展は、2012年に東京・山種美術館で観ている。
「生誕120年」を記念したものだったが、平八郎作品は22点のみだった。
参)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1848923699&owner_id=3341406
規模からして、今回の展覧会が如何に意欲的なものか分かる。

本展では平八郎の初期から晩年に至る作品が、5つの創作期に分けられ、時系列で展示されている。
構成は以下の通り。

・第1章「手探りの時代」
・第2章「写実の探求」
・第3章「鮮やかな転換」
・第4章「新たな造形表現への挑戦」
・第5章「自由で豊かな美の世界へ」
・素描・下絵
・写生帖

福田平八郎(1892-1974)は大分市に生まれ、18歳で京都に出て、京都市立絵画専門学校〜京都市立美術工芸学校で学んだ。
本展の本画約120件の内45点程が大分県立美術館の所蔵品である。

チャプターに従って観ていこう。

◆第1章「手探りの時代」(1913〜18)
京都の美校在学中から卒業後、18歳〜26歳の習作期の作品。
自分の進むべき道を模索中で、まだ作品に統一感はない。
当初は「九州」という号を使った。
文部省美術展覧会(文展)に出品した2作品は落選。

《池辺の家鴨》(1916/24歳/大分市美術館》
のんびりした南画風を試みている。
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◆第2章「写実の探求」
美校の卒業制作に悩んだ平八郎は、中井宗太郎教授に相談、対象と客観的に向かい合う事を選択し、大正後半から昭和初めにかけて写実表現に励む。

《朝顔》六曲一隻 (1926/34歳/大分県立美術館)
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◆第3章「鮮やかな転換」
昭和の初め頃から、平八郎は形態を単純化し、色彩と画面構成による作品を試みる。それは装飾的表現とも言える。
大正デモクラシーの時代、世の中の文化は革新的でモダンな風潮に満ちていった。モダニズムが平八郎を変えていったのだろう。

《漣》(1932/40歳/中之島美術館/重要文化財)
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アップにしてみると、ミミズがのたくったようにしか見えない。
第13回帝展では賛否が分かれた。日本画の新たな可能性を問うたが、保守的な画家や評論家には理解できないものだった。

◆第4章「新たな造形表現への挑戦」
第2次大戦に敗れた日本は、伝統的な日本画の存在そのものに批判が集まった。
平八郎は、自然観察の原点から、対象が有する造形の妙を抽出し、写実と装飾が融合した作品を生みだしていった。

《筍》(1947/山種美術館),《雨》(1953/東京国立近代美術館)もこの頃の作品だが、後期展示のため観る事はできなかった。

《雲》(1950/58歳/大分県立美術館)
所蔵館以外ではこれが初公開。
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第6回日展出品。湧き上がる夏雲は輪郭付近の陰影表現が抑えられ、雲の白さが、空の青さとのコントラストで引き立っている。
こんな雲を描いた日本画家が過去にいたろうか?

《水》(1958/66歳/大分県立美術館)
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これはもはや抽象画と言ってもいい。

◆第5章「自由で豊かな美の世界へ」
1961年69歳の出品が日展の最後になった。そののちは、小規模な展覧会に、気のおもむくままに制作した商品を発表するというスタンスになる。
平八郎は形態の単純化が一層進む。
《游鮎》(1965/73歳/大分県立美術館)
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この頃、平八郎は児童の絵に興味を持ち、彼らの作品を模写したりもしている。

◆素描・下絵
平八郎は「写生狂」と自称し、いつも写生帖を持ち歩いて感動のままに描いた。

《うす氷》(1949/57歳/大分県立美術館)
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菓子箱を開けた時の平八郎の感動が、観る者に伝わってくるようだ。


中之島美術館ではモネ展(2/10〜5/6)を併催している。
そちらは観る事ができなかったが、ランチにカフェレストラン Musée KARATOでモネ展記念特別プレート「連作の情景」を食べた。

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美味しかった!
 

〈参考資料〉
・『【特別展】生誕120年 福田平八郎と日本画モダン』
 監修・執筆、山下裕二 他
 発行 2012年、山種美術館
・Web「没後50年 福田平八郎」サイト
・音声ガイド「没後50年 福田平八郎」
 制作 アートアンドパート
 
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