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2024年02月27日23:35
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西田俊英展/松坂屋美術館
2/24(土)、名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴きに出かけたおりに、名古屋市栄の松坂屋で開催中の「西田俊英展 不死鳥」を観た。
下はそのポスター。
様々な大賞を受賞してきた日本画家 西田俊英(1953- )は今年71歳になるが、今も新たな挑戦を続けている。
武蔵野美術大学の教授を退官するにあたり、2022年から約1年間休職して屋久島に移り住み、その自然に抱かれて描き溜めたスケッチやデッサンを基に、現在東京に戻り大作《不死鳥》を制作中だ。
当初、幅1.2m高さ2.05mのパネルを横に60枚つなげて70mの作品を構想していたが、現在既に40枚で48mとなっており、本人の言葉によれば、最終的に80〜100mになるのではないか、との事である。
武蔵野美大美術館に続き、この松坂屋美術館で、その未完成作品の部分を展示中だ。
・会期 2/10〜3/3
このあと、4/20〜6/23、茨城県天心記念五浦美術館に巡回する。
《不死鳥》は序章と6つの章で構成される計画で、その内、今回は序章から第三章の一部迄(48m)を展示している。その最後のパネルは、まだ半分が着彩前で、鉛筆による下書きが見える。
そこには自然を容赦なく切り刻んでいく斧を担いだもののけが登場する。樹々が流す慟哭の涙が彼らには見えないのだろうか。
屋久島の世界遺産登録地が島のたった2割にしか過ぎない事を多くの日本人は知らない。8割の森は既に伐りとられてしまった。
冒頭のポスターの図像は、第二章の中程の部分。
巨樹の手前に小さな人間の姿があるのが分かっただろうか。
その他に、本展では過去の作品が19点と、屋久島で書かれたデッサン(おそらく《不死鳥》の完成画に活かされる)が6点展示されている。
おりしも2/25(日)、NHK-Eテレの「日曜美術館」で、屋久島における西田の取り組みが特集となった。
『”描く”という祈り 日本画家･西田俊英』、その内容を加味して以下、展覧会のレポートとする。
西田は若い頃は専ら空想画を描いてきた。
現実から受けたイメージが次第に現実からかけ離れ、真実味に欠け、中身のないものだった。ものをしっかり見ずに描いていると、そのうちバケの皮が離れる、と、これも本人の弁。
西田は、1993年に文化庁在外研究員として1年間インドに滞在し、新しい作風に取り組んだ。その後も毎年のようにインドに出かけた。
私は2022年7月に浜松市天竜区の秋野不矩美術館で、その頃の西田作品の展覧会を観た事がある。
インドという切り口は秋野と共通するもので、「インドに魅せられた画家 秋野不矩と西田俊英展」というタイトルであった。
以下、同年7/31付けのレポート参照。
https:/
同展で展示された《水汲みのマヤ》(1999)はレポートに画像も貼付しているが、インド時代の彼の代表作となり、今回の松坂屋展にも並べられていた。夜のタージ･マハルを描いた名品《星夜燦々》(2001)も同じく。
その後、再び西田は苦悩に陥る事となる。
私の作品はマンネリではないか？同じようなものばかり描いていいないか？
西田は自分を根本から見つめ直したいとの思いに駆られて、屋久島で暮らす事としたのである。
「僕が最後に見届けたいもの、真実がここにはある。ありのままの厳しい原生の自然がここにはある。この深い森に抱かれて描いたならば、僕は何も作ろうとする必要がない。」
つまり、己の貧しい作為等、この島で1000年も生きてきた巨樹の前では何の意味もない、と。
西田は、屋久島の高地にあって、島民にも一部にしか知られていないと言われる巨樹、通称「三穂野杉(みほのすぎ)」の前で泊まり込み、昼と夜それぞれの姿を描く事と決めていた。
見えるものの全てを描く、それは無論単なる写実ではない。
その巨樹の前で自身の矮小さを知った西田は感極まった。その前では、自身の全てを曝け出すしかない。
特に夜のそれは、ヘッドライトを消せば、葉陰から透かして見える星以外、全く光はなく、漆黒の闇である。しかし、対峙するうちに見えてくるものがある。その何かを紙の上に残したい。
1年間屋久島で夢中で描いたあらゆるもの、巨樹だけでなく、カニやカエルやヘビ、蝶や昆虫、それら小さな生命を育むコケ、そして豊かな水、それらは見事につながっている。自然の共生、そして生命の循環。
東京のアトリエに帰り、それらを大画面に一種の宇宙として再構成していく。それが西田の《不死鳥》である。
以下で展覧会のチラシの表と裏を見る事ができる。2段階に拡大できるので、是非大きくして見て頂きたい。
https:/
〈参考資料〉
・「日曜美術館」『”描く”という祈り 日本画家･西田俊英』
ディレクター 中沢一郎
放送 2/25(日)、NHK-Eテレ
・図録『不死鳥』
執筆 西田俊英
発行 2024年2/10、アート･ベンチャー･オフィス ショウ
下はそのポスター。
様々な大賞を受賞してきた日本画家 西田俊英(1953- )は今年71歳になるが、今も新たな挑戦を続けている。
武蔵野美術大学の教授を退官するにあたり、2022年から約1年間休職して屋久島に移り住み、その自然に抱かれて描き溜めたスケッチやデッサンを基に、現在東京に戻り大作《不死鳥》を制作中だ。
当初、幅1.2m高さ2.05mのパネルを横に60枚つなげて70mの作品を構想していたが、現在既に40枚で48mとなっており、本人の言葉によれば、最終的に80〜100mになるのではないか、との事である。
武蔵野美大美術館に続き、この松坂屋美術館で、その未完成作品の部分を展示中だ。
・会期 2/10〜3/3
このあと、4/20〜6/23、茨城県天心記念五浦美術館に巡回する。
《不死鳥》は序章と6つの章で構成される計画で、その内、今回は序章から第三章の一部迄(48m)を展示している。その最後のパネルは、まだ半分が着彩前で、鉛筆による下書きが見える。
そこには自然を容赦なく切り刻んでいく斧を担いだもののけが登場する。樹々が流す慟哭の涙が彼らには見えないのだろうか。
屋久島の世界遺産登録地が島のたった2割にしか過ぎない事を多くの日本人は知らない。8割の森は既に伐りとられてしまった。
冒頭のポスターの図像は、第二章の中程の部分。
巨樹の手前に小さな人間の姿があるのが分かっただろうか。
その他に、本展では過去の作品が19点と、屋久島で書かれたデッサン(おそらく《不死鳥》の完成画に活かされる)が6点展示されている。
おりしも2/25(日)、NHK-Eテレの「日曜美術館」で、屋久島における西田の取り組みが特集となった。
『”描く”という祈り 日本画家･西田俊英』、その内容を加味して以下、展覧会のレポートとする。
西田は若い頃は専ら空想画を描いてきた。
現実から受けたイメージが次第に現実からかけ離れ、真実味に欠け、中身のないものだった。ものをしっかり見ずに描いていると、そのうちバケの皮が離れる、と、これも本人の弁。
西田は、1993年に文化庁在外研究員として1年間インドに滞在し、新しい作風に取り組んだ。その後も毎年のようにインドに出かけた。
私は2022年7月に浜松市天竜区の秋野不矩美術館で、その頃の西田作品の展覧会を観た事がある。
インドという切り口は秋野と共通するもので、「インドに魅せられた画家 秋野不矩と西田俊英展」というタイトルであった。
以下、同年7/31付けのレポート参照。
https:/
同展で展示された《水汲みのマヤ》(1999)はレポートに画像も貼付しているが、インド時代の彼の代表作となり、今回の松坂屋展にも並べられていた。夜のタージ･マハルを描いた名品《星夜燦々》(2001)も同じく。
その後、再び西田は苦悩に陥る事となる。
私の作品はマンネリではないか？同じようなものばかり描いていいないか？
西田は自分を根本から見つめ直したいとの思いに駆られて、屋久島で暮らす事としたのである。
「僕が最後に見届けたいもの、真実がここにはある。ありのままの厳しい原生の自然がここにはある。この深い森に抱かれて描いたならば、僕は何も作ろうとする必要がない。」
つまり、己の貧しい作為等、この島で1000年も生きてきた巨樹の前では何の意味もない、と。
西田は、屋久島の高地にあって、島民にも一部にしか知られていないと言われる巨樹、通称「三穂野杉(みほのすぎ)」の前で泊まり込み、昼と夜それぞれの姿を描く事と決めていた。
見えるものの全てを描く、それは無論単なる写実ではない。
その巨樹の前で自身の矮小さを知った西田は感極まった。その前では、自身の全てを曝け出すしかない。
特に夜のそれは、ヘッドライトを消せば、葉陰から透かして見える星以外、全く光はなく、漆黒の闇である。しかし、対峙するうちに見えてくるものがある。その何かを紙の上に残したい。
1年間屋久島で夢中で描いたあらゆるもの、巨樹だけでなく、カニやカエルやヘビ、蝶や昆虫、それら小さな生命を育むコケ、そして豊かな水、それらは見事につながっている。自然の共生、そして生命の循環。
東京のアトリエに帰り、それらを大画面に一種の宇宙として再構成していく。それが西田の《不死鳥》である。
以下で展覧会のチラシの表と裏を見る事ができる。2段階に拡大できるので、是非大きくして見て頂きたい。
https:/
〈参考資料〉
・「日曜美術館」『”描く”という祈り 日本画家･西田俊英』
ディレクター 中沢一郎
放送 2/25(日)、NHK-Eテレ
・図録『不死鳥』
執筆 西田俊英
発行 2024年2/10、アート･ベンチャー･オフィス ショウ
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