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2024年02月25日22:51

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名フィル第520回定期①～日本の地方文化の継承

2/24(土)、名古屋フィルハーモニー交響楽団の第520回定期演奏会を聴く。
会場は名古屋市中区金山の日本特殊陶業市民会館フォレストホール。

2023～24年シーズンは「継承」シリーズと銘打って様々な企画を進めているが、中で今回は「日本の地方文化の継承」とサブタイトルが付けられている。
そのプログラムは以下のように組まれた。

指揮川瀬賢太郎

・小出稚子《リヴァーサイド》(作曲：2023)
・小曽根真ピアノ協奏曲《もがみ》(2003)
　　ピアノ小曽根真

　～休憩～

・小山清茂《管弦楽のための木挽歌》(1957)
・大栗裕《大阪俗謡による幻想曲》(1955)
・伊福部昭《交響譚詩》(1943)
・外山雄三《管弦楽のためのラプソディ》(1960)

◆小出稚子《リヴァーサイド》(2023)

小出稚子(こいでのりこ)は1982年生まれ。
2023年4月より名フィルの第4代コンポーザー･イン･レジデンスを務めている。
文化庁新進芸術家海外研修制度によりアムステルダム音楽院、デンハーグ王立音楽院を修了。
またインドネシア政府奨学金他によりインドネシア国立芸大でジャワ･ガムランの演奏と理論を学ぶ。
2007年、オーケストラ作品《ケサランパサラン》が第17回芥川作曲賞受賞。2016年、《布袋》がトンヨン国際音楽祭でアジア作曲家ショーケース･ゲーテ賞及び聴衆賞受賞。
2020年、ニューヨークで開催されたMusic From Japan Festivalで招待作曲家として特集され、室内楽作品《毘沙門》が世界初演される。
2022年にはBBC Radio3の委嘱作品《揺籠と糸引き雨》がBBC響によって世界初演。

小出によれば、「リヴァーサイド」とは三途の川の川岸を意味するのだとの事。
彼女の脳裏には、『古事記』の黄泉比良坂、『方丈記』の「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず、…」、ベトナムやインドネシア、ハワイ、等での、宗教以前の死にまつわる様々な体験が浮き沈みした。
生と死の境はどこにあるのか、臨終の瞬間、人は何処へ行くのか、おそらくくっきりとした境目はなく、グラデーションのようなものか。その霧のように模糊としたさまをこの曲では表現しているらしい。
弦楽は、開放弦とハーモニックスを多用、半音より細かな音程も使いながら、協和と不協和の間をゆったりと行きつ戻りつする。歌えるメロディらしきものはない。
編成は、木管,金管は2～3、8種類のパーカッション、ハープ、ピアノ、弦5部。
今回の演奏が世界初演となった。

◆小曽根真ピアノ協奏曲《もがみ》(2003)

三途の川から最上川へと、水は流れ着いた。

小曽根真(おぞねまこと/1961- )は誰もが知る通り、ジャズ界で活躍、最近はモーツァルト等クラシック作品の演奏でもステージに立つ。
2014年には芸術選奨文部大臣賞大衆芸術部門受賞、20018年には紫綬褒章。

ピアノ協奏曲《もがみ》は、2003年、第18回国民文化祭･やまがた2003の開会式用に、総合プロデューサー故井上ひさしから委嘱されて作曲。小曽根のピアノと指揮、山形響の演奏で初演された。
翌年には小松長生指揮、コスタリカ国立響で世界初演も果たした。
井上の意図したテーマは「水」、山形県の歴史は最上川なしには語れないとして、《最上川舟歌》をモチーフとするよう要請した。
小曽根は実際に山形、最上川を訪れ、厳しい自然と風景、季節のうつろい、歴史を学び、《最上川舟歌》からの引用を随所に盛り込んで作曲を行った。
伝統的な急緩急の3楽章構成に、リズム等ジャズ的な要素を加味。
のちの改定により3管編成とし、打楽器も多数取り込み規模を大きくして、複数のカデンツァには即興演奏も加えた。

・第1楽章アレグロ
冒頭のピアノ･ソロは最上川の川面に降る夕立を表す。
オーケストラにより、夏、祭り、歌、台地の生気等、川の表情が鮮やかな変化を見せる。
次第にピアノはスウィングし、第1楽章では特にジャズ風のノリが濃くなる。

・第2楽章アダージョ
クラリネット、ファゴット、オーボエによる木管三重奏でスタート。厳しい冬に身を小さくする親子3人。
弦楽は雪に覆われた山や原の表現に、飢饉による口減らしの悲惨な歴史を重ねる。
そして権力者と闘う下層民達。その悲しみ、怒り、苦しみ、絶叫がピアノと金管によるクライマックスを築く。
その後、ピアノ･ソロが最上川舟歌を背景にして夢幻を奏し、再び木管三重奏に回帰する。

・第3楽章ヴィヴァーチェ
冬が終わり、春がやってくる。それは新しい命の胎動を感じさせる。動物達は冬眠から覚め、雪解け水が小川となり、集まって大河最上川の広がりへ、希望へ。
後半ではアンダンテとなり、モーツァルト風の室内楽がピアノ･ソロと絡む。
コーダではヴィヴァーチェに戻り、今回は歓びに溢れる合唱の代わりをハモンド･オルガンが奏して終結を迎えた。

小曽根に大きな拍手とブラヴォーが贈られ、自作のジャズ･ソロ《オリジン･オブ･スターズ》がアンコールとして演奏された。

20分の休憩後、後半へ。

〈続く〉
　

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