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2024年02月23日20:14

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【音楽】 孤独と情熱

冷たい雨の降る寒い一日だったが、午後は川崎に行った。「孤独と情熱」と題する、小川典子企画の演奏会に行くためだ。

プログラムは次のとおりである。
 ・フィブス:NORIKOのためのセレナータ
 ・フィブス:5つのやさしい小品
 ・シューマン:3つのロマンス
 ・ラヴェル:ソナチネ
 ・フィブス:ソナチネ
 ・フィブス:Night Paths
 ・シューマン:交響的練習曲

   ピアノ :小川典子/サクソフォン:須川展也
   会場:ミューザ川崎 (14:00 開演)

ロベルト・シューマンとモーリス・ラヴェルはもちろん知っているが、プログラム中に出てくるもう一人の作曲家ジョゼフ・フィブスの作品は全く初めてだ。この演奏会に行くことにした時に、名前も初めて知ったくらいだ。1974年生まれの英国の現役作曲家ということである。でも、今日は演奏の間に小川典子による簡単な解説が入るので、未知の曲にも入っていきやすくなる。

1曲目の「NORIKOのためのセレナータ」は、題名のとおり小川典子のために作った曲で、小川の主宰する「ジェイミーコンサート」のために作曲されたという。シンプルで瞑想的な穏やかな曲であった。続いての「5つのやさしい小品」も、タイトルのとおり音符も簡素に書かれているのだが、どことなく暗く、静かに何かを想うようで、「セレナータ」と合わせて「孤独」を感じてほしいという曲だ。演奏前に小川は、「ミューザに聴きにきて下さる方なら、シンプルな曲想に込めた思いに気付いてくれるでしょう」と、勝手に客席の人たちのハードルを上げる。

「さて、孤独といえばシューマンでしょう」ということで、シューマンの「3つのロマンス」に続く。もともとはオーボエとピアノのための曲だが、今日はソプラノ・サクソフォンで演奏する。他にヴァイオリンでも聴いたことがあるし、どんな楽器でも行けそうな曲だが、サクソフォンによるものも、またなかなか素敵であった。やはり2曲目が愛と優しさに満ちた曲で素敵なのだが、1曲目の少し切ないような曲も、改めて聴いてみるといいなと思った。

続いてはラヴェルの「ソナチネ」だが、シューマンとフィブスの曲がプログラムに並ぶ中、なぜ唐突にラヴェルがと思うが、実はその次のフィブスの「ソナチネ」につながるもののようだ。フィブスの「ソナチネ」は、ラヴェルの「ラ・ヴァルス」への賛辞という曲なのだそうだ。でも演奏するのは「ラ・ヴァルス」ではなく「ソナチネ」なのだが、ラヴェルのソナチネは小川典子の演奏にもよく合っているような気がした。フィブスの「ソナチネ」は、本日の演奏会のために書かれた曲で、世界初演である。英国の作曲家の新作初演を、日本国内で聴けるとは! 1曲目と2曲目もそうだったが、フィブスの作品はどれも聴きやすい。基本的には調性を持った音楽だということだ。ここで一旦休憩になるが、その前に客席にいた作曲家のフィブスがステージ上に呼ばれて挨拶をした。現役の作曲家なら、こういうことができるのである。

前半は「孤独」だったが、休憩のあとは「情熱(パッション)」ということだろうか。再び須川展也が登場し、フィブスの「Night Paths」から始まる。アルト・サクソフォンとピアノのための曲で、日本初演だという。「アルト・サクソフォンとピアノのためのラプソディ」という副題があり、曲想が様々に変化しながら、ピアノの和音に乗せてサクソフォンが縦横無尽に駆け巡る。

最後はシューマンの「交響的練習曲」だ。本日のプログラムの中で、最も耳に馴染んでいる有名曲だ。演奏前に小川が「業務連絡です」というので、何かと思ったら、「プログラムに書いてある演奏時間の12分は誤りで、正しくは25分です」とのこと。たしかにこれを12分で弾いたらどれだけ速く弾くんだとなってしまう。変奏曲の形を取っており。これも曲想が様々に変化していく。シューマンのあらゆる作品を凝縮したような曲だ。小川は情感たっぷりに主題を弾き、あとは「情熱」を持って、最後まで盛り上げていった。

最後にアンコール演奏がある。「孤独あり、情熱あり、有名曲から初演曲までいろいろでしたが、最後は穏やかにしめたいと思います」ということで、ピアノとアルト・サクソフォンで「ロンドンデリーの歌」を演奏した。フィブスが英国の作曲家ということでのアンコール選曲だろう。

外に出ると相変わらず寒いが、素敵な演奏会を楽しめた午後であった。
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