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2024年01月11日21:03

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【読書】 最近読んだ本 備忘禄

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「鬼とはなにか」 (戸矢学著、河出書房新社)

「鬼」というと、多くの人がある一定のイメージを持っており、古来無数に描かれてきたが、そもそも「鬼」とは何なのかを考察しようという本である。言ってしまえば「おに」は「かみ」と同類の、畏怖すべき何者かを意味していたということである。これを踏まえて、いろいろな話を進めていく。ヤマト政権に従わぬ「まつろわぬ民」としての鬼を平将門とからめて述べたり、怨霊と鬼の関係を崇峻天皇暗殺に絡めたり、また各地の鬼を祀る神社を詳説したり、女が鬼になったいわゆる「般若の面」の話から鬼とツノの関係に及んだり、ヒミコの鬼道と前方後円墳の関係を考察したり、鬼門という信仰と日本人の関わりについて述べたりと、鬼についてのさまざまな視点から書いている。そして不思議なことに、鬼の居場所はしばしば山奥や森の中、離れ小島や雲の上など、神とは住処が一緒なのである。


●「47都道府県 女ひとりで行ってみよう」 (益田ミリ著、幻冬舎文庫)

2002年12月から2006年10月にかけて、毎月1回ずつどこかの都道府県に行って、47全てに行った旅行記である。いずれも日帰りから1〜2泊程度の短い旅行で、「ただ行ってみるだけ」のゆるい旅エッセイである。都道府県内をくまなく回る訳でもなく、有名観光地やご当地グルメも興味がなければスルー、そもそも人と話すのが苦手らしいので、何か特別なことをするのでもない。ただなんとなく気になったところに数ヵ所行っては帰ってくるだけである。でも、こういう「ゆるい旅」っていいなと思う。周囲の情報に踊らされるのではなく、自分のペースで行きたいところに行くということだ。私も以前は、あれもこれもと行った感じがあったが、最近は出かけるのもこれに近くなっていて、共感するところがある。


●「この世にたやすい仕事はない」 (津村記久子著、新潮文庫)

ストレスに耐えかねて長年続けていた仕事をやめた「私」。職安に紹介してもらった仕事に就くが、どれもちょっと変わったニッチな仕事。作家の部屋をひたすら監視する仕事、バスの停留所間の広告アナウンスを作る仕事、製菓会社で「おかき」の袋に書く豆知識を考える仕事、街中に啓発ポスターを貼る仕事、そして広い森林公園の小屋でイベントチケットのミシン目を入れる仕事。もともと「ただ眺めていればいいだけの仕事を」と言って紹介された仕事に始まったのだが、「この世にたやすい仕事はない」のである。仕事を通じてさまざまな出会いがあり、会社からも引き留められるが、あえて契約更新はせずに別の仕事に就く。そして最後に「私」はある決意をするのである。仕事とは何かということを振り返ってみたくなるような小説だ。


●「地名散歩」 (今尾恵介著、角川新書)

この人の書いた本を見かけるとつい手に取ってしまう私も、やはり地図好きかつ鉄道好きなのである。そもそも日本の地名は複雑で、同じ場所を示す住所ですら書き方がいろいろあったりする。この本では、まずはモノの名前を冠する地名をいくつか取り上げ、続いて国号にちなむ地名、新や旧がつく地名など意外な名付けられ方をするところを挙げ、特定の地域の地名しか使われない「方言漢字」(津軽の「萢」、埼玉の「垳」、茨城の「圷」、愛知の「湫」など)や、独特の読み方、表記のゆれ(宮城県塩竈市にある塩釜駅など)等々、また、ノ、の、之や、が、ガ、ケ、ヶなど、さまざまな書き方があるだけでなく、同じ場所なのに統一されてなかったりする例をあげる。地名の話はかくも面白い。そして、地名には土地の文化や歴史が絡んでいるのである。


●「数学の女王」 (J.ゴールドマン著/鈴木将史訳、共立出版)

数論を「数学の女王」と名付けたのはガウスだが、そのとおりあらゆる数学に関わり、古代から現代までの数学史は、数論とともにあったと言ってもよいものである。この本は、数学史の視点からの数論入門である。まずは現代数論の礎を築いたフェルマー、オイラー、ラグランジュ、ルジャンドルの業績から入り、数学史上最大の巨人といえるガウスの業績を、その著書「整数論」を概観しながら解説していく。そして、代数的整数論の核心へと入っていき、20世紀の整数論へとつながっていく。私も大学では数学科を卒業し、大学院で整数論を研究した身であるので、お馴染みの内容も多いのだが、細かいことは忘れてしまっているし、前書きにあるように「賢明な読み飛ばし」をして(証明の詳細は追わずに流す)、雰囲気をつかむことにして読んだのだが、久しぶりに数学に浸かった正月休みであった。
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