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2023年11月04日19:45

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「福田美蘭～美術ってなに？」/名古屋市美術館①

11/1(水)、徳川美術館で「人間讃歌～江戸の風俗画」展を観たあと、タクシーで名古屋市美術館に移動。
開館35周年記念で「福田美蘭～美術ってなに？」展を開催中だ。

・会期 9/23～11/19

福田美蘭(ふくだみらん/1963- )とは誰か？
私もまとめて彼女の作品を観るのは初めてである。拙い言葉で説明するより、以下、展覧会レポートをご覧頂く方が良いだろうと思う次第だ。

展示総数は56件、その展示構成は以下の通り。
・「序章福田美蘭のすがた」
・「名画イメージのひろがり/視点をかえる」
・「時代をみる」

◆「序章福田美蘭のすがた」
福田美蘭は東京藝大油画専攻を卒業後、同大学院に進み、1985年に修士課程を修了。
翌々年1989年、弱冠26歳、当時史上最年少で安井賞を受賞。
1991年にはインドトリエンナーレで金賞を受賞した。
序章では、福田美蘭の原点を俯瞰する。

・《緑の巨人》1989年/国立国際美術館蔵

第7回インドトリエンナーレで金賞をとったのがこの作品。
観る人達の間に共通項を持つため、歴史的名画、コミック、テレビCM、広告、商品パッケージ等に溢れる誰でもが知っている既存の図像を集めて構成した。
我々を取り囲む過剰な情報とスピード感。

◆「名画イメージのひろがり/視点をかえる」
我々は、世の中で「名画」とされている作品について、名画たる所以も分からないまま盲目的に受け入れてしまっている。
福田美蘭はそうした姿勢に疑問を投げかけ、既成概念に捕らわれない問いを発する。
例えば、描かれた場面の前後の時間はどうであったか、画中の登場人物の視線を再現したらどう見えるか、等々。
観客の想像はどれ程広がるだろうか。名画は更に生き生きと動き出すかもしれない。

・《ポーズの途中に休憩するモデル》2000年/富山県美術館

レオナルド･ダ･ヴィンチは実際にモデルを見て絵を制作した、《モナ･リザ》も然り。
モデルには休憩が必要だ。その時、モデルはダ･ヴィンチの前で寛ぎ、より自然な姿を見せていたに違いない。
《モナ･リザ》には当初、両脇に円柱が描かれていたという説もある。

・《ゼフィロスから見たクローリスとフローラと三美神》1992年/高松市美術館蔵

ボッティチェッリの《プリマヴェーラ》では、右(西)から入り込んできた緑色の男神ゼピュロスが春の風をクローリスに吹きつけている。するとクローリスの口からは花々が溢れだし、クローリスは、その左にいる花の女神フローラに変身する。

ゼフィロスの視線からこの舞台はどう見えるだろうか。
右から伸びてクローリスを抱こうとしている緑色の腕は、ゼフィロスのそれである。その向こうにいる花の衣装の女神がフローラ。
ボッティチェッリの絵画は概して平面的だが、この絵に、時間と奥行き感が現れた。

・《見返り美人鏡面群像図》2016年/平塚市美術館蔵
9/29付け中日新聞記事より。

菱川師宣の《見返り美人図》。その女性登場人物を様々な角度の鏡に映し、一画面に収めてみた。
菱川師宣の意図は、当時の女性に流行していた髪型や着物の模様、帯の結び方を見せる事にあった。
福田美蘭の描き加えにより、それは更に充実し、全方位から女性の美しさを愉しむ事ができる。

でも、私ならきっと美蘭とは違う絵にした。
振り向いている女性が、一体何をそこに見ていたか？
かぶき者風の若者が彼女に誘い声をかけていたのかもしれないし、物売りの男が調子のよい甚句を唱えていたのかもしれない。
それを描き加えて、もっと江戸の風俗味を出したと思う。

・《死の仮面を被った少女(フリーダ･カーロによる)》2023年/作家蔵
同じ記事に掲載されているフリーダ･カーロの同名小品は、名古屋市美術館が所蔵している。
美蘭は、この展覧会のため、今年になってこのインスタレーション作品を作った。
メキシコの女性画家フリーダ･カーロは、この絵を流産で亡くした我が子への哀悼の気持ちで金属板上に描いた。
じょうろは同じ金属でできていて、不規則に曲がった赤色を発光するネオン管は、胎児とつなかった血管やへその緒を想像させる。

(続く)
　

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