mixiユーザー(id:55664038)

2022年11月20日19:26

48 view

詩『だから…鬱に追いつかれる前に!』

『それ』に気づくのは一瞬だった。
『それ』に気づけるまでには一年かかった。

そして『それ』から逃れられるのは一日だけ。

何も思いつかなかった。 不思議と焦りもしなかった。 

ただ静かに笑ってた。 思い出せないけど笑ってた。

何もしてないけど笑ってた。 

何も出来なかったけど笑顔でいた。

……思い出して笑えなかった。


けれども気づけたから噴き出しちゃった。


災厄の状況に備えなさい、過ぎれば笑えるのだから

けれど最悪の時代になっても私達は過ぎるまでは気づかないもの。

それはまるで逃亡者の見栄張り。

不安を隠すため、忘れるために金を使い!

酒を飲む。

そして叫ぶ。 不思議に空虚に響く豪傑笑いと底が一段抜けたような声で。


酒を飲め! 酒を飲め!

明日のことなど考えてもしょうがない!
金が増えるわけでもねえ!

今日は50フィートの大船の船長室。

明日は鳥籠に吊るされて鳥に食われるか魚に食われる。

楽しめるのは酒と女だけ!
女が楽しいかはわからねえ!

それでも酒を飲め!酒を飲め!

何も持たずにやってきて何も持てずに去っていく

酒以外は全て世の理のままに!



そんな逃亡者の悲しい豪傑振る舞いには酒を飲み、騒ぎ、そして路上で寝ればいいのだ。

今だけは…。今だけは…と。

やがて日は昇る。
腹は減る。
そして悲しいことにまた誰かを愛す。

つまりはそういうものだ。

『それ』はやってきて、なすることもなくただ捕らわれていくのだから。

明日の夜のことを考えずに泣く、笑う虚しきエセ豪傑者達。 

その心根を考えただけで、不思議と安堵してしまうのです。

明日の『不安』を『考えなく』てもよくて、『昨日』の『後悔』にも向き合わなくてもよいのですから。

ただ『今』しかない。 

ああ『彼ら』には『今』だけなのです!

未来も過去も考えない『無責任』の清々しさ

泥に落ちていないピカピカの靴のようなその清潔さが『それ』に屈服してただ『無思考』で『死んだように生きている私の汚さ』に
は眩しく、そして美しく見えるのです。

けれども。

ああ、けれども!それは文字通りの明日を塗り潰す行為。

やがて豪勢な宴は終わり
酒は飲まれて吐かれ
誰かが足を取られる
窯の火は消えさり

カラスは朝日によって鳥の形に切り取られ夜からまた産まれた。

そして逃亡者達は吊るされている

あの合唱は聞こえなくても
風に揺られて、また歌ってる。

酒を飲め! 酒を飲めと。

在りし日を知っているその私が檻の下、揺れるその下で『今』と『昔』を見上げてる。

『屈服』した私がただ笑ってる。

気づかないだろうけど笑ってる。

気づいたら笑えなくなるだろうけどまた笑ってる。


だからそうなる前に、そうならないために。

叫びなさい! 
笑いなさい!
ただ泣きなさい!泣きなさい!
辛いのなら正直に言えばいいのですから。

お逃げなさい!
そしてお生きなさい! 
やがて疲れてわからなくなって『それ』に追いつかれた。

その日まで…を。




















もうお気づきでしょう?

私は『それ』に追いつかれました。















0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する