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2022年05月30日21:17

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演劇『ロビー・ヒーロー』

5/29(日)、穂の国とよはし芸術劇場PLATで演劇『ロビー・ヒーロー』を観る。
フォト

新国立劇場プロデュース、ケネス・ロナーガン(1962- /米)作、桑原裕子(1976- )演出。
本作は2001年にオフ・ブロードウェイで初演、日本では本公演が初演である。

新国立劇場で5/6〜22迄公演が行われ、豊橋公演が5/28〜29、兵庫県立芸術文化センターで6/5、岡山芸術創造劇場岡山市立市民文化ホールで6/11と続く。
桑原が新国立劇場に演出家として招聘されたのは、今回が初だ。
順序から勝手に想像するのだが、新国立劇場で充分に練り込まれたものを豊橋では観る事ができただろう。

ロナーガンは映画も撮っている。
2017年8月にシネマイーラ浜松で観た『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016制作)は、彼が脚本を書き監督をした。
 参)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1962022592&owner_id=3341406

桑原裕子は穂の国とよはし芸術劇場の芸術アドバイザーで、私は同劇場で彼女の作・演出による演劇を3本観ている。
・『荒れ野』(2017初演)
 参)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1974008699&owner_id=3341406
・『ひとよ』(2011初演)
 参)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977122877&owner_id=3341406
・『或る、ノライヌ』(2021初演)
 参)https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1980381074&owner_id=3341406
群像劇、会話劇、苦みの残るユーモアという面では、桑原はブラナーと共通点がある。

『ロビー・ヒーロー』の時と場は、現代ニューヨーク、マンハッタン島の中間層向けマンション、真夜中のロビー及びその前の路上。
登場人物は4人、マンションの警備員2人と、この辺りを見回る警察官2人。
警備員はまだ若いジェフとその上司で黒人(*)のウィリアム、警察官はビルと見習い中の女性ドーン。

 (*)顔を黒く塗ったりはしていないが、会話の細部からして黒人だと想像される。

ジェフはこれが初めての定職だが、人生に確たる目的もなく、何かというとチャラチャラしてふざけてばかりいる。
ウィリアムはやや頭が固いと思われる程、仕事に対しても何に対してもこうしなければならないとの信念がある。それから外れたジェフの態度には腹も立てるが、彼の将来のためと様々に諭しもする。しかし、ジェフには一向に響かない。

ビルはドーンを連れ、見回りのためマンションの前迄やってきた。
昇進コースに乗る学歴のないビルは、警察署内の細かな点数稼ぎにせっせと精を出している。
その得点を見習いのドーンに鼻にかけるビル。ドーンは頼りになる先輩だと勘違いし、憧れの眼でビルを見る。
ビルは根っから女性関係に緩い男だ。
ドーンをモノにできるかもしれないと鼻の下を伸ばしつつ、2人でマンションのロビーに入っていく。実はその高層階にはビルと深い関係の〇〇夫人がいる。
ビルはドーンにロビーでの待機を指示し、1人エレベーターで上にあがっていく。
ジェフはビルと〇〇夫人の関係を知っていて、話しの成りゆきでついドーンに喋ってしまう、確たる証拠もないくせに。
いつ迄もビルが上から降りてこないから、ドーンもおかしいとは思っていた。

非番のウィリアムがロビーにやってくる、表情は苦悩に満ちている。
ジェフが尋ねると、嫌がっていたがとうとう彼は喋りだす、不良仲間に巻き込まれた弟がいるのだが、殺人の疑いで警察に拘留されてしまったと。
ウィリアムは弟にニセのアリバイ証言するように頼まれた。
正義感の強いウィリアムだった筈だが、弟の来し方や将来を考えると、どう対応すべきか揺らいでしまう。
今度はジェフがウィリアムを諭す番になったが、慣れない事でウィリアムの怒りを買う。

ビルが乗ったエレベーターが降りてくる。
出てきたビルにドーンは、勤務時間中の行動を警察の上部に報告すると主張する。
ビルはうろたえるが、興奮してドーンに言い放つ、私の評価ひとつでお前は本採用されない事になるぞ、と。
怒るドーン。涙を流しながらジェフに相談する。

その他、思ってもいなかったが、些細な成りゆきで、4人の関係は滑稽な程歪んでいく。
マンハッタンのマンションの狭いロビーで、何処でどう間違えたのだろう?、何が正しかったのだろう?
恐らく答えは一つではない。
ジェンダー、人種、ハラスメント等々、今日的な問題が表に滲み出てくる。
こんな筈ではなかったのにと、もがく4人。


作 ケネス・ロナーガン
翻訳 浦辺千鶴
演出 桑原裕子
美術 田中敏恵
照明 宮野和夫
衣装 半田悦子

出演
 ジェフ 中村蒼
 ウィリアム 板橋駿谷
 ビル 瑞木健太郎
 ドーン 岡本玲
 
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