mixiユーザー(id:5540901)

2022年02月24日05:40

227 view

読書日記N o.1416(杢太郎、白秋、啄木。傑作青春ミステリ)

■宮内悠介「かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖」2022年1月幻冬舎刊

2022年も、早2月末になって、来週は3月を迎えます。
今年は、例年になく、冬が厳しいですね。

札幌は降雪で、交通が麻痺しているようですし、雪が多い地域にお住まいの方
には、心からお見舞い申し上げます。

さらには、コロナの第6派が、ピークを超えたとはいえ、相変わらず感染状況が
厳しく、東京でももう、一か月以上、新規感染者数が一万人を超えます。

基礎疾患のある高齢者の私としましても、必要な外出以外は、ひたすら蟄居の
毎日です。春の訪れとともに、コロナ禍の収束が待ち遠しい今日この頃です。

さて、読書ライフの方ですが、私はともすると、ノンフィクション系の本に偏り
がちなところがあり、気づけば、小説を読んだのは、12月31日の有川ひろさんの
「みとりねこ」が最後で、約2か月、小説を読んでいませんでした。

どおりで、魂が乾くわけで、何か読みたいと思って、新聞広告を観ていましたら、
最新刊として、本書が大きく宣伝されていましたので、手に取った次第です。

手が伸びたのは、書いた宮内悠介さんの本を以前読んだことがあることと、何だか
面白そうだなと思ったからです。

以前読んだのは、10年前、2012年に、直木賞候補となり、第33回日本SF大賞を
受賞したデビュー作「盤上の夜」でした。

面白そうと思ったのは、登場人物が、木下杢太郎、北原白秋、石川啄木など明治期に
活躍した文人たちの青春譜のミステリだというう触れ込みだったからです。

読後感は、いやぁ、存分に堪能しました。

本書は、連作ミステリで、所収されているのは、以下の6篇です。

第一回 菊人形異聞
第二回 浅草十二階の眺め
第三回 さる華族の屋敷にて
第四回 観覧車とイルミネーション
第五回 ニコライ堂の鐘
最終回 未来からの鳥

遅ればせながら、本書の惹句を紹介します。

“木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭、石川啄木ら
若き芸術家たちが謎に挑む 傑作青春ミステリ“

“明治末期に実在した若き芸術家たちのサロン、 その名も「パンの会」。
隅田川沿いの料理店「第一やまと」に集った 木下杢太郎、北原白秋、
石井柏亭、石川啄木等が推理合戦を繰り広げる。
そこに謎めいた女中・あやのも加わって――。 “

“鬼才・宮内悠介の新境地!“

新聞や雑誌にも、本書の書評が出始めており、先週の朝日新聞の大矢博子さんの
書評が秀逸でしたので、抜粋を紹介します。

“収録された6篇の短編の個々の謎解に膝を打つのはもちろんだが、本書は他にも
さまざまな楽しみに満ちているのが特徴だ。“

“まず事件の舞台が、団子坂や浅草十二階、上野で開催された勧業博覧会、ニコライ堂
など、明治時代を色濃く写した名所であること。次いで綺羅星の如き登場人物たち。
前述の面々に加え、石川啄木が登場することもある。彼らが生き生きと闊歩する様子が
浮かぶ。“

“そしてこの時代ならではの事件の真相。それは時として彼らが挑む〈美〉の意味を問い、
時として社会のありようを映し出し、さらには現代も照射する。特に最終話がもららす
衝撃には思わず声が出た。“

“場所、人、時代が三位一体となり、読者を物語に誘う。明治の東京の温度や匂いまで
もが立ち上るようだ。“

“SF作家と称されることの多い著者の、真正面からの本格ミステリである。
歴史好きにもお薦めの一冊。“

左様、大満足の一冊でありました。

24 8

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2022年02月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728