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2021年03月11日20:16

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の備忘的メモ

●「脳を司る「脳」」 (毛内拡著、講談社ブルーバックス)

脳はニューロンが発生する電気的な活動によって情報伝達が行われているというのが常識とされていた。しかし、それだけではない。脳細胞のすき間である間質が、実はより重要な役割を担っていることが分かってきているのだ。細胞外スペースは何もない空間ではなく、脳内物質の通り道になっており、神経修飾物質や細胞外電場はここで拡散して伝わるである。知性や感情の進化を解く鍵も、そこにあるかもしれないのだ。残念ながら、脳は開けて見れば分かるというものではない。生きた脳の活動を直接見ることは出来ないだけに、まだ謎の多い難しい分野だが、これまでの常識を超えた新しい発展が見えつつあるようで、興味深い。


●「電網私刑」 (小杉健治著、朝日文庫)

小杉健治の小説を読むのは初めてか。SNSで人気の、いわゆるインフルエンサーな女性が殺された。ネット上では「怪しい男」の実名が拡散され、やがて逮捕されることになる。その男は過去に少年院に入っていたこともあり、本人も罪を認めているという。しかし、弁護士の水田は彼と接見したり、彼の周囲の人の話を聞いたりするうちに違和感を覚えてくる。また、この事件を追っていた記者谷垣も、何か引っかかるものを感じていた。一方ネット上では、自称ジャーナリストが流す事件の情報、それに乗っかって無責任なことを書いている匿名の人たち。ついに真犯人が現れ、彼の無実は証明される。ネットの闇の恐ろしさをテーマにした話である。


●「相鉄はなぜかっこよくなったのか」 (鼠入昌史著、交通新聞社新書)

大手私鉄の中で路線長が最も短い相鉄。もともと神奈川県内だけを走る地味なローカル私鉄だったが、JR乗入れで都内直結を果たしてから、イメージが大きく変わった。というより、イメージ以前に、地元の人以外にはほとんど知られていない私鉄だったのだ。それが、インパクトのある濃紺の車両が突如新宿駅に現れ、誰もが「あれは何?」と思う。それこそ相鉄の戦略。しかし、相鉄の歴史をたどってみると、決して地味だった訳ではない。横浜西口の開発や海老名駅周辺の開発など、手掛けたのは相鉄だ。それに沿線住宅地開発の先駆者でもあった。車両も他の私鉄にはないユニークな特徴を備えている。相鉄は、実は魅力的な鉄道なのである。


●「ダンとアンヌとウルトラセブン」 (森次晃嗣/ひし美ゆり子著、小学館)

書店に平積みにされていたのを見た瞬間、レジに持っていって買ってしまった本。「ウルトラセブン」各話のエピソードや見どころを、セブン対宇宙人や怪獣ではなく、人間ドラマに焦点を当てて、ダン役の森次とアンヌ役のひし美の対談という形でまとめたものである。「ウルトラセブン」はリアルタイムで見ているし、現在もDVDで何十回も見ていて、細部にわたって熟知しているつもりだったが、細かい描写など、この本による新たな発見もあり、それを確かめるために何本か見直してしまった。放送から50年以上経っても支持され続けるTVドラマは、そうそうあるものではない。


●「私捨悟入」 (安野光雅著、朝日新聞出版)

昨年亡くなった安野氏のショートエッセイ集を久しぶりに読んだ。久しぶりというのは、学生時代に「数学セミナー」に連載されていた「算私語録」を楽しく読んでいたからだ。この本も「数学教室」に2019年まで連載された文章を集めたものである。画家であり絵本作家でありながら、数学にも科学にも文学にも造詣が深く、短い文章の中に独特の鋭い視点やひらめきがある。日常の出来事や幼い頃の思い出、日頃考えていること、気付いたことなど、話題は様々だ。SNSの「つぶやき」にも近いが、このような上質な「つぶやき」は、読んでいても楽しいのである。
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