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2020年08月30日18:02

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「民間信仰」 (桜井徳太郎著、ちくま学芸文庫)

昭和41年刊行の本の文庫版である。文庫版で初めて読む。日本の民衆生活の奥底に息づいている精神、河童や濡れ女子のような魔物や、疫病をつかさどるハヤリ神、人に憑く目に見えない妖怪、そして正月行事や農耕年中行事などを、宗教民俗学者である著者が、それぞれの土地に住む人々の生活との関わりの中で述べた本である。そんなものは高度成長期以前の過去の遺物、あるいは古老の迷信に過ぎないと片付けるのは簡単だが、改めて見てみると、日本人の奥底に根付いている精神が浮かび上がってくるのである。民俗学には詳しい訳では全くないが、このような話は興味ある。


●「漱石と鉄道」 (牧村健一郎著、朝日新聞出版)

漱石の作品には鉄道がよく登場する。「三四郎」はいきなり列車の中だし、「坊っちゃん」にも、新橋からの旅立ち、松山の「マッチ箱のような汽車」、そして最後は市電の技師になるという場面がある。小説に描かれる鉄道の描写は、まさに漱石自身が列車の中で見聞したことに基づいているという。実際に漱石は当時としては珍しいくらい鉄道であちこちに行っているのだ。明治は全国に鉄道網が形成されていった時代で、鉄道史の節目に偶然にも漱石は多く関わっているのだ。そんな漱石の足跡を追いつつ、漱石と鉄道の関係を綴った本である。もちろん日本国内だけではなく、ロンドンや満州にも及ぶ。漱石と鉄道が好きなら、間違いなく面白い本である。


●「楽園のカンヴァス」 (原田マハ著、新潮文庫)

初めて読む原田マハの小説。表紙カバーのアンリ・ルソーの絵に釣られて、何気なく手に取って買ったものだが、絵画にはあきれるほど疎いのに、どんどん引き込まれてしまった。若き日本人女性の美術史研究者と、ニューヨーク近代美術館のアシスタント・キュレーターに課せられた謎解きは、スイスの富豪が所有するルソーの「夢」に酷似した絵「夢をみた」が、真作や贋作かを見極めること。そのために2人が行うのは、7章からなる「物語」を毎日1章だけ読んで、7日目に結論を出すこと。7日目に、その「夢をみた」についての講評がそれぞれ述べられて、意外な結果に。ルソーとピカソの関係、絵に込められた想い、そしてルソーの絵への深い愛情を持った人たち。まさに美術ミステリーの傑作だ。


●「あの日の親子丼」 (山口惠以子著、ハルキ文庫)

「食堂のおばちゃんシリーズ」の第6作。「はじめ食堂」は常連客に新たな客が加わり、すっかり板に付いたバイトの万里の考え出す新メニューも好評だ。鯖サンド、白子ソテー、押し寿司、日向夏、そして親子丼と、その新メニューに絡んで、ちょっとした事件や、人間模様が描かれる。万里の腕を見込まれて、引き抜きのスカウトも来たが、やはりこの店を離れられない万里。そのスカウトも実は裏があったり、その流れでSNSに根も葉もない中傷が書かれたり、それでも、下町風情とタワーマンションが両立する町、佃の「はじめ食堂」店は、みんなが支え合って負けることはないのだ。そういえば、親子丼というのはポピュラーなようで、最近はあまり食べていないと気付いた。
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