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2020年03月09日01:19

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渡辺謙の「The King and I」

数年前、渡辺謙がブロードウェイで「王様と私」のリバイバル上演で王様役のオファーを受けて話題になりました。その公演のロンドン公演版がWOWOWで放送されました。

ブロードウェイ・ミュージカルは様々な権利の問題があってテレビ放送されることがほとんどありません。それがテレビで見られる!見なくては!

「王様と私」は西洋人の東洋人に対する偏見が含まれる内容のため、実はあまり好きではありません。しかしリチャード・ロジャーズとオスカー・ハマースタイン2世の美しい楽曲の数々があり、ミュージカル好きとしては「見なくては!」になってしまうのです。

最近はさすがに東洋への偏見を丸出しにするような内容ではまずいと思うようになってきたか、マシな演出にはなっています。ラストは割合素直に感動できるものになっていました。やっぱりミュージカルナンバーが素晴らしい。楽しい歌、切ない歌…歌の場面はどれも印象に残ります。

ただ、この作品についてどうしても気になることがあります。
それは、「王様と私」はブロードウェイで上演後映画化されていますが、タイでは映画の上映が禁止され、舞台版が上演されることもない、と言うことです。
映画版はまだ初期の東洋に対する偏見が強く出ていて、私もあまりいいとは思えません。タイではアンナを招いたモンクット王と教えを受けた息子チュラロンコーン王は、西洋文明を取り入れ、タイの近代化に貢献した王様として尊敬されています。それが野蛮な王様のように描かれていたら憤慨もするでしょう。

「王様と私」にタイ人のスタッフが入ったことがあるでしょうか。王宮のセットや衣装、そして「アンクル・トムの小屋」をモチーフとしたダンスシーンはどれだけ実際のタイが反映されているのでしょうか。
タイ文化に詳しくない私には間違いか正しいかの判断はできません。しかし、タイ人スタッフが考証に入ったことがあるという話は聞いたことがありません。しかしそれでいいのかと。

例えば、オペラの「蝶々夫人」は最近では日本人の手が入ってあまり変な舞台はなくなっています。しかしもっと昔は西洋人だけで作られた舞台でヘンテコな着物、中国か日本かわからないような適当なセットの舞台も珍しくなかったはず。そういった舞台を見たとしたら、日本人としては「こんなの、日本じゃないー」と言いたくなるでしょう。たとえ西洋人の観客が何が違うのかさっぱりわからず、蝶々夫人の悲劇に感動していたとしても、それで納得したくはないでしょう。

タイの人も「王様と私」を見て、「こんなの、タイじゃないー」と思うかもしれません。
正しいタイの衣装、正しいタイのセットや音楽を反映させるような舞台を作ることはできないものかと思います。

また、タイで繰り広げられる数々の出来事に対して、どうしても「野蛮」「未開」の視点はぬぐいきれません。
しかし、この時代は1862年。日本では江戸時代です。日本には大奥があり、一夫多妻が当たり前。そして大奥の女性が恋人と逃げ出したりしたらひどいお仕置きが待っているのも当然。そして、将軍、上さまの前では臣下はひれ伏すのも当たり前。
みんな「王様と私」の王宮で起っていることと同じです。それを「野蛮な風習」と言われたら?「カエルのようにはいつくばって土下座するのは野蛮」と言われたら?

映画は変えようがありませんが、舞台ならこういった部分を変更することは可能です。タイ人が納得できる「王様と私」は作りえないのでしょうか。

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