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2019年08月02日20:05

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の備忘的メモ。

●「古代世界の超技術」 (志村史夫著、講談社ブルーバックス)

日本が「木の文化・文明」なら、西洋は「石の文化・文明」である。その石の古代文明の驚くべき知恵を追っていくという本である。エジプトのピラミッドでは、運送機械もクレーンもない中で、どのように巨大な建造物が出来たのか。古代ギリシャでは数学発祥の地といわれるだけあって、アルキメデスやヘロンなどにより現代にも通じる発明がすでになされていた。古代ローマのコンクリート技術は、せいぜい数十年しかもたない現代の鉄筋コンクリートに比べ、数千年の時を経てもなお原形をとどめているのはなぜか。いわゆる「四大文明」とは接点がなく独自の文明を持った、メソアメリカ・アンデス文明は、鉄器を持たないのに脅威の石積み技術があった。これらは実は、効率や経済性を優先した現代の視点で見るから「驚くべき技術」なのであって、ハイテク機器やコンピュータ技術で人間の知恵が退化しただけだというのが面白い。


●「台湾、ローカル線、そして荷風」 (川本三郎著、平凡社)

久しぶりに川本三郎氏の本。「東京人」に連載していた随筆集の何冊目かである。奥様を亡くし一人暮らしになってから十年以上になるというが、むしろ身軽になって、あちこちに気ままに出かけては、現地で小さな発見をしたりする。ローカル線に乗って行くところは有名な観光地でも名所旧跡でもない。その土地の日常なのである。そこに、永井荷風をはじめとする文学や往年の映画との関連を見つけたりする。近場の日帰りだけではなく、時には台湾にも出かけるが、これも古き良き時代の面影があるからだ。私も同じような気まぐれ散策を時々しては書いたりしているので、通じるところがある。


●「食堂のおばちゃん」 (山口惠以子著、ハルキ文庫)

佃は、古き佳き下町の風情と、タワーマンションが立ち並ぶ近代都市が混在する町。その佃で、昼は定食屋、夜は居酒屋になる「はじめ食堂」を営んでいる82歳の姑の一子(いちこ)と嫁の二三(ふみ)。2人の「食堂のおばちゃん」と、そこに集まる古くからの馴染客や新参のタワーマンション住まいの客たちが織り成す、ちょっとした出来事の数々。小さな騒動も起きるが、最後はほっこりとするような話である。「はじめ食堂」は以前は名の通った洋食屋であった。そのシェフであった一子の夫も、その息子で二三の夫であった二代目も若くして亡くなってしまい、家庭料理の店に衣替えして、姑と嫁が切り盛りしているのだ。著者の山口さんも元「食堂のおばちゃん」だったとのことである。


●「春風夏雨」 (岡潔著、角川ソフィア文庫)

多変数解析函数論の「三大問題」を解決した世界的数学者岡潔の随筆集である。数学者としてだけではなく、稀有な思想家でもあり、科学、芸術、教育、文化などについて、独特の鋭く深い視点で展開する論考は、他者の追従を許さないほどである。生命とは何か、自己とは何か、情緒とは何かについて、縦横無尽な思考によって綴られる。「無明」とよばれる自我本能を抑制し、各人が「真我」を自覚して行動すれば、世の中の問題は起きないが、実際は日本の少年の三割は「非行少年」であるという。このままにしていてば、いずれ日本はとんでもないことになると50年前に書いた内容が、今実際どうなっているか...。


●「客車の迷宮」 (和田洋著、交通新聞社)

かつては国鉄に1万両以上在籍し、ありふれた存在だった客車も、いまや絶滅寸前である。自ら動力を持たず、機関車に牽かれないと動けない客車だが、その姿は多種多様で、同じ形式でも1両毎に形態が異なっていたりする。電車のようにきれいに編成がそろうこともなく、新型車両の隣りに戦前製造の車両が連結されていたりする。これら客車を語ればまさに「迷宮」だが、その複雑多様さこそがまさに魅力なのである。人だけではなく、荷物や郵便物も運び、あるいは現金輸送車まであった。さらに特殊な用途の客車もあった。改良を加えられながら変遷をたどり、原形をとどめなくなった車両もある。そんな国鉄時代の客車を語り尽くした、マニアによるマニアの本である。
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