mixiユーザー(id:12784286)

2019年01月27日21:29

305 view

【音楽】 オペラ「ニホンザル・スキトオリメ」 @すみだトリフォニー

今日も寒い1日だったが、夕方は間宮芳生さんのオペラ「ニホンザル・スキトオリメ」の公演に行った。日本人作曲家による日本語のオペラである。

●間宮芳生: オぺラ「ニホンザル・スキトオリメ」 (台本:木島始)

 ・プロローグ「年輪の秘密」
 ・第1景「森の肖像画コンテスト」
 ・第2景「サルたちの姿と魂」
 ・第3景「美しい女王ザルの望み」

 ・女王ザルの間奏曲
 ・第4景「絵かきザルの投獄」
 ・第5景「奇怪な絵 ざわめく森」
 ・第6景「ほら穴と爪あと」
 ・第7景「末期の耳」
 ・第8景「炎あれくるう」
 ・エピローグ「芽生えの肌ざわり」

   野平一郎指揮 オーケストラ・ニッポニカ
   ソプラノ:田崎尚美(女王ザル)/バリトン:原田圭(オトモザル)
   テノール:大槻孝志(スキトオリメ)/バリトン:山下浩司(ソノトオリメ)
   バリトン:北川辰彦(クスノキ)/根本泰彦(男)
   ヴォーカル・コンソート東京/コール・ジューン

   会場: すみだトリフォニー (16:00 開演)


間宮芳生さんは90歳の現役作曲家である。今回のオペラは、間宮さん90歳記念として、オーケストラ・ニッポニカが企画し実現したものである。このオペラ「ニホンザル・スキトオリメ」は、1965年11月に放送初演、1966年3月に舞台初演がされたが、それ以降は全く上演されず、実に53年ぶりである。

オペラといっても、オーケストラは通常通りにステージに乗っている。その向かって右が合唱だ。オペラを歌い演じる歌手陣は、指揮者の左右に3人ずつ分かれて位置している。こういうのは「演奏会形式」と呼ばれるが、それぞれちゃんと猿の格好に扮しているのだ。といっても、猿のお面をかぶったり、猿の着ぐるみを着ている訳ではない。顔の一部を赤く塗り、猿っぽい(?)衣装、クスノキっぽい(?)衣装を着ているのだ。しかし、このオペラは実はほとんど動きを必要としない。だから、これで十分にオペラのステージになるのだ。

オーケストラには、通常の管弦楽に、バグパイプ、リコーダー、リュート、オルガンが加わっている。

ストーリーはクスノキが男に語るという形で進み、一番出番が多いのがクスノキだ。
女王ザルは、美しく聰明で、サルの国の最高権力者だ。
オトモザルは、その女王ザルの家来で、ひたすら女王ザルの気に入るようにふるまう。
スキトオリメは絵かきザルで、「見えないもの」を見抜いて描く。
ソノトオリメも絵かきザルで、見えるものをそのまま描く。

男にクスノキが語りかけるところから始まる。イヌよりサルが強かった時代の話だ。

森では女王ザルを描く肖像画のコンテストが行われるが、女王ザルはどの絵もお気に召さない。そんな中、スキトオリメは自分が見抜いた真実を絵にして、女王に臆することなくそれを述べる。女王ザルはスキトオリメに一等賞を与える。「満足しないことに女王の女王らしさがあった」のだ。スキトオリメは旅に出る。

女王ザルは、旅から帰ったスキトオリメに「猿の神様になりたい」という。そして、そのカミサマの絵を描けという。

ここまで第3景。ここで休憩が入り、休憩のあとは「女王ザルの間奏曲」が演奏される。この間奏曲は、今回の上演のために新たに作られたものだ。最初の方に「現役の作曲家」と書いたのも正しいのである。

スキトオリメは夢から着想を得て、女王ザルの絵を完成させるが、それは女王ザルの怒りを買い、投獄される。(牢屋が、そのクスノキの穴なのである。) スキトオリメは穴の中でも絵を描き続けるが、誰もそれを見るものはいない。やがて、イヌの国と戦争になり、イヌがニンゲンというもっと恐ろしい動物と結託したために、森は炎につつまれてしまう。

クスノキは男に穴の木目をよく見るように促すと、「見えなかったもの」が見えてくる。スキトオリメの描いたものが、男の胸の中で踊り出しているのだ。

歌の他に台詞による部分も多い。音楽は、バグパイプや、リコーダー、リュートが効果的に使われたり、炎の場面ではオルガンの強奏があったり、なかなか変化に富んでいて楽しめた。

ソノトオリメは第1景しか出番がなく、スキトオリメも第5景以降は出てこない。クスノキは最初から最後まで、男への語りという形で存在し、イヌの国との戦争も、クスノキによる男への語りだけで、イヌを演じる歌手はそもそも設定されていない。動きがほとんどなくても成立するオペラなのである。

終演後は、大きな拍手に包まれて作曲者の間宮さんがステージ上に登場した。90歳というのはまだ若い、という雰囲気でスタスタ歩いていっては、指揮者や歌手、オケのメンバーと握手をしていた。

実に愉しい2時間であったが、会場の外に出ると急激に気温が下がっていて、寒さが身にしみた。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2019年01月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031