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2019年01月14日20:16

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詩『春を売る少女』


ひりつくような辛さと凍てつくような無関心の間柄で育まれた彼女はここで一人春を売る

悲しいかな その春は不完全である。

けれども春を知らない少女は知らずにそれを売る。

誰かがそれは違う、本当の春はこういうものと気づかせてくれるまで、きっと彼女は不完全な春を売り続けるだろう。

でも彼女は春を得ることはない。

彼女が春を知ることはない。

それは言われることでも教えてもらうことでもなく春はただ当たり前のように存在していて

それがゆえに見えず

触れられず

ただ曖昧でうろんで儚い

彼女は春を未だに見つけられずにそれを吐き出し続けるのだ。

春はここにある。

ここに春はある。

内面を削りつづけながら春の残骸を手放し続けて、やがてはすり潰されて消えるまでに彼女は見つけることができるだろうか?

隔たれた透明ケースの誰かは静かに思考する。

諦めと希望が混ぜ込まれた不思議な気持ちで。











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