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2018年08月12日17:47

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【読書】 最近読んだ本 備忘録

最近読んだ本の、備忘的メモ。

●「鳥類学者 無謀にも恐竜を語る」 (川上和人著、新潮文庫)

鳥類学者による、恐竜についての科学エッセイである。畑違いの分野について書いた本という訳ではない。鳥類こそ恐竜の子孫なのだから、恐竜を語ることは鳥類を語ることにつながるのだという。恐竜が生きた時代を見た人類は存在しない。したがって、化石などから推測するしかないという厳しい条件の中で、辻褄の合う説明を付けることとなるが、新たな「事実」が発見されると過去の常識は簡単に覆る。我々が子供の頃に見た恐竜図鑑の絵はすでに過去のものだ。ティラノサウルスにも今は羽毛があったとされる。(先日、茨城県自然博物館で見たのもそうなっていた。) 恐竜の生態や進化を、ユーモアあふれる文章で綴った好書である。


●「暗がりの弁当」 (山本周五郎著、河出文庫)

山本周五郎が書き残した随筆を再編したもので、以前読んだものも含まれるが、改めて読んでみたくなったものである。主に昭和30年代に書かれたもので、高度成長に向かいながらも、一方で戦後の影を引きずっているような時代。山本周五郎の独特の感性で、市井の人生の味わいと哀歓を、しみじみと語りかける。標題にもなっている「暗がりの弁当」は、昼間の映画館で人目を避けるようにそっと弁当を食べる人の話。昼間から優雅に映画を観ているのではない。映画を観るよりしようがないのである。食に関する話も多数あり、洋食を好み、ワインやウィスキーを好むが、いわゆる食通ではない。山本周五郎の小説は結構読んだが、随筆の名手でもあることを再認識した。


●「稲の日本史」 (佐藤洋一郎著、角川文庫)

日本人の食生活に欠かせない米。従来は、日本の稲作は弥生時代に広まったとされ、狩猟や採取中心の縄文時代とは明確な変化があったというのが定説だった。しかし、遺跡に残る稲の遺伝子を調べているうちに、縄文時代から稲作はあったこと、それが弥生時代以降も継続しているということが見えてきて、植物遺伝学の立場から一石を投じた本である。要するに、縄文時代から弥生時代になって稲作に劇的な変化が生じたのではなく、縄文時代から現代までの一貫した流れがあるということである。発掘されたわずかな遺跡から推定するしかない領域のため、議論は尽きないだろうが、なかなか興味深い本である。


●「ふしぎな県境」 (西村まさゆき著、中公新書)

地図を見ていくと、不思議な県境があることに気付く。それを単に地図上で探すだけではなく、実際に現地に行ってみたという、「県境紀行」である。県境をはさんで明らかに舗装が変わったりと分かりやすいところもあるが、何の変哲もない住宅地に県境があって、隣りの家は別の県だというところもある。県境マニア(?)には有名な飯豊山にひょろひょろ伸びた福島県にも、本格的な登山をして行くなど気合が入ったレポートである。最近は「県境」を観光スポットの一つにするところもあり、以前は何もなかったところに丁寧な案内板ができたり、中には「県境の館」なる観光施設までオープンしたりと、様子も変わってきているようだ。自分もこの手のものは好きだし、この本にないところも含めて、巡ってみたいと思っている。


●「昨夜のカレー、明日のパン」 (木皿泉著、河出文庫)

何かもやもやとしたものが残りながらも、ある種の吹っ切れた感じもするという、不思議な読後感の小説である。25歳で亡くなった一樹。その妻のテツコと父親のギフが、今でも2人で暮らしている。一樹の母も一樹が17歳の時に亡くなった。テツコの恋人岩井、一樹の幼なじみ、従兄弟の虎尾など、周囲の人と関わりながら、ゆるゆると一樹の死を受け入れ、新しい「何か」に向かって一歩進もうというところまで、ようやく心が落ち着いていく。タイトルの意味も、最後の方になってようやく分かるようになっている。
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