判別できない人

お客さんところの息子（40半ば）が
たまには庭の草を刈りなさいと言われて
個人の庭には珍しい大型のエンジン草刈機で家庭菜園を斜めに突っ切ったという

もー　どーしようもないんだからー
かんたろさん　ちょっと教えてやってくださいよう

みたいな話だったので
散々言われてる息子さんのところに行って
まー大変でしたなーwとか言い分を聞いてみる
まー　除草剤でも撒きながら質問どうぞってな感じで
あ　おれも手伝いますとか言われて
二人で歩きながら　おいおい覚えていけばいいですよ
最初はわかんないもんです
って　オマエなんで芝桜に除草剤かけてんだよw
なんかそれはボケのたぐいか　ボケの種類のやったらあかんやつか？w

と　ここまで来て
あ　もしかしてこの人は噂の「判別できない人か？」
と気づいた
「これはなんて植物ですか？」
「これは菊です」
「これはなんて植物ですか？」
「これはドクダミです」
「これはなんて植物ですか？」
「きゅうり」
「これはなんて植物ですか？」
「ナス」
「これはなんて植物ですか？」
「ブルーベリーです　うまいです」
「食べ物なんですか」
「うん」
「これは皮をむ・・」
「むかんでよろしい」
「うーん　難しいなあ」

言っておくが　この人は別に「残念な人」とか「あたたかな人」ではない
フツーに会社勤めして車で会社に通っている
財務次官になれるほど優秀だとは思わないが
そこらあたりに生活している　世間では最もポピュラーな感じの人だ

ただ　植物がみんな同じに見えてしまう
ぺんぺん草とほうれん草の見分けがつかない
クローバーとイチゴの見分けがつかない
そんな人だ
えー　そんな人いるの？とか思う人も多いだろうが
いるのだ
それは物覚とか知能がという問題とは全く別で
認知に関する部分に　一般と異なる部分があるのだろうとされている

学生時代に山岳部の新人を山に連れて行くと
「先輩　なんでここが道だってわかるんですか？」
と必ず聞かれる
一般縦走路を歩くことは少ないので　普通の人が見れば藪の中をてくてく歩いているように見える
一年もそんな山歩きをしていれば　
なぜ自分があの時道がわからなかったのかが　わからなくなる
そして　彼らもまた　来年には後輩から同じ質問をされる
いつの間にか山肌にほんのわずかな痕跡をたどって歩けるようになっている
なぜかは経験だとしか言いようがないが
彼らの脳は微細な違いを環境として受け止める回路が出来上がったというわけだ

わかるようになるというのはそういうことで
言語的な認識とは別な認識が働いている
この認識が特定分野において困難な人というのがいて
その人がわからない理由は
わかる人には全くわからない
そんなもん　普通そうだろう　そう思うだろう
くらいしか説明がつかない

漢字が読めるけど書けないという人は多いと思う
「薔薇」は「バラ」だが書けと言われて書ける人はそうそう多くない
なんとなくイメージでしかないけれども
「番薇」は「バラ」ではないのはすぐにわかる
しかし
「薔嗇」はいちいち認識する気のない人であればバラであると思うだろう

酒飲みは　ウイスキーグラスかワイングラスか冷酒用かホットウイスキー用かわかるだろうが
飲まない人間にとっては「コップ」でしかない

しかし　通常
興味を持って接すればわかるようになる
だが　いくら興味を持ってもわからない人は存在する
おそらく彼らの眼に映るものは
一般の我々が見ている世界ではない
我々は「常識的な記号」が連続した風景を見ていて
それは長年の間に一つ一つ経験的に身につけた記号の集大成のようにも思えるが
その多くは高田純次的な
「まーそんな感じなんじゃないの？知らないけど」
みたいな感じで補填された記号だ
そのあたりの閾値が低ければ
各種の野菜が植わった畑が
一面の雑草にしか見えない
山岳部の新人がルートが判別できないのと同じであって
脳に　その環境の差異が利用すべきものとして認識できていないということだ

ま　少し困るかもしれないが
一般生活で何か差し障りがあるわけではないけれども
極端な料理下手とか
工作下手とか
他の勉強はできるのに　この人なんでこんなのがわからないんだろうみたいな人とかは
どこかでなんらかのこういった認知的な違いがあるのかもしれない

いるでしょ　身の回りに
すごい言語能力が高いのに絵が保育園児並みとかw
論理式を自由に使いこなせるのに　エンジンの修理できない人とかw


思った以上に人間の脳は均一ではないらしいw