世間師

いわゆる定住した人間として定職についていない人間のことだ
宮本常一先生がよく取り上げる放浪する日本人だ

まー　有名人で言えば車寅次郎なんかもその一形態だ
彼の場合は本職で堅気ではないからちょっとイメージが違うがw
また　「もののけ姫」に登場するジゴ坊は
日本人の典型タイプを描きたくてああいうキャラになったらしいが
あれは今はほとんどいない世間師キャラであって
企業サラリーマンとは別種の人格だ

https://www.aozora.gr.jp/cards/000241/files/53034_43407.html

こんな感じが世間師だろう
ちょっとロシア文学風のこの掌編は民俗学的な価値もあると思う

問題は　その人の生き方のルールだ
社会的には違法でも
その人の中では許容範囲で
違法であることと倫理が必ずしも一致してない
しかし　その倫理感は自分で考え出したり
独りよがりな思い込みではなく
法以前の「掟」のようなもので
それが「世間」を覆っていることを学んだものだ
損得も幸不幸も関係ない
そうしなければならないとあらかじめ決まっているルールだ

先日のニュースで
元ヤクザの親分が子供の食事を出すボランティアをやっているというのがあった
面白かったのは　「普通の人間が一番偉い」みたいな文句を一斉に投稿した人の群れがいたことだ
元組長は世間師であるから
ボランティアと暴力団と言う過去には一貫性がある
ただそれは違法と遵法という二元論では語れない
わかりやすいものではないのだ

それを世間知という
実際に世の中が流れるのは法によってではなく世間知によってだ
イメージ的には言語学でいう母国語と他言語の関係に近い
母国語が世間知で
他言語がとりあえず意思の疎通が実用的に文法と単語の記憶によってできる「法」にあたる

元組長の世間知は　そうそう離れたものではなかったから
ボランティアへと移行できた
生業を捨ててまではそういった活動に移行しない人間より偉いのは当然で
何もしない人間が批判できるようなものではない
また　批判する側の生業が本当にそれほど褒められたものであるのかも
遵法であるかないかで決まるものではなかろうにw

世は複雑だw